或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

香山草紙 エッセイ集


  93.古都奈良 ~法隆寺編~

「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」
この句は、余りにも有名な子規の句であるが、この句の良さに気が付くまでに、私はずいぶん遠回りをしてしまった。
以前は時々気が向くままに川柳まがいの俳句をひねって、暑中見舞いのはがきに添えたりしていたのだが、私の友人の中で唯一知性派の一人が、定年退職を機に 本格的に俳句を始め、句集を送ってきたり、俳句についての論評を聞かされたりするうちに、自分の見識の無さに愕然とし、句を作ることができなくなってし まった。と同時に、子規の句の偉大さを知ったのである。「柿食へば」が実に新鮮で、その言葉が生きている。子規は若くして結核を患い、34歳でその生涯を 閉じるが、生来の明るさは死の直前までそのままであったとのことである。
「法隆寺」は別名「斑鳩寺」ともいい、宗派は聖徳宗の総本山であり、ご本尊に「釈迦如来」を抱き、創建は607年、開祖は推古天皇および聖徳太子である。 1993年、世界遺産にも登録されている。伽藍には「西院伽藍」と「東院伽藍」とがあり、西院伽藍は「南大門」を入った小高い場所に位置し、右に「金 堂」、左に「五重塔」を配し、それらを囲むように回廊が続いている。金堂も五重塔も現存する世界最古の木造建築物で、いずれも国宝である。特に五重塔は 1400年以上も幾多の災難から逃れ、その構造は今で言う免震工法がとられている。
東院伽藍は聖徳太子が住まいとしていた斑鳩宮の跡地に建立され、回廊で囲まれた中に八角円堂の「夢殿」が建ち、回廊南面には「礼堂」、北面には「絵殿」お よび「舎利殿」が建っている。夢殿には聖徳太子の等身像とされる「救世観音像」が安置されている。また、「大宝蔵院」には様々な国宝級の仏様、例えば「百 済観音像」「九面観音像」「夢達観音像」「地蔵菩薩観音像」等々が安置されており、とりわけ百済観音菩薩像は、「広隆寺霊宝殿」に安置されている「弥勒菩 薩半跏思惟像」と共に、私の好きな仏様である。どちらの仏様も観ているだけで心が優しくなってしまう。できるだけ早い時期に、ゆっくり時間をかけて再び法 隆寺を訪れたくなった。
今、奈良は遷都1300年祭で賑わっている。平城京跡地がメイン会場で、今年の11月7日まで開催される。ロマンと向学心に燃え、命も惜しまぬ若き人々を 乗せた遣唐使船も展示されているそうである。シルクロードの終着点・奈良。日本の文化の発祥地・奈良。奈良は日本人の心の故郷であり、私の心の拠り所でも ある。