或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

香山草紙 エッセイ集


  86. 会社の目的

「四十にて惑わず」と云う言葉がありますが、昨年還暦を迎えた私は、振り返ってみれば、悩み、迷い、惑ってばかりのこれまでだったように思います。しかし、やっと「会社の目的」「ミッション(使命)」が鮮明に解りました。
今まで私は「良い企業」「良い経営」とは…について、明解な答えを持ち合わせていませんでした。「利益の多い会社」が良い企業なのだろうか?「売上が大き い会社」なのか?「有名な会社」や「従業員の多い会社」なのだろうか?そのいずれもが私にはピッタリしていませんでした。
私は或る人の話をヒントに深く考えました。「良い企業」「良い経営」は人間が織りなすドラマであり、人生そのものなのだ…というふうに思いを巡らせまし た。という事は「人生」とは…を考えないと結論には至らない、それはまさしく哲学そのものなのです。人生における最終目的を考えないと、企業も経営も会社 の目的も理解する事はできないのです。
では、人生における人間の最終目的は何か…という事ですが、それは明瞭です。「幸せになる事」です。すなわち「良い企業」「良い経営」とは、それに関わる 全ての人、当社グループにおいて具体的に申し上げますと、先ず社員、社員の家族、協力業者の方々とその家族、そしてお客様が幸せになる事が、良い企業であ り、会社の目的である…というのが私の出した結論です。
では「幸せ」とは…と言う命題は、また、難しいものがあります。それは一人一人「value(価値観)」が異なるからです。ここで具体的な例を紹介しま す。弊社にN君という現場担当者がいます。彼は大変真面目で、お客様からも営業からも、また同僚の信頼も厚い、なかなか立派な工事管理者です。しかしある 時、「この間、急な打ち合わせが入って、子供の運動会に行く事ができなかった」と、残念そうに愚痴をこぼしていたと言うのです。以前の私なら「何を甘い事 を言っているのだ。仕事優先が当り前や」と言ったと思います。しかし、今は「運動会に行きなさい。そちらの方が大事や」と言うでしょう。彼にとって何より の幸せが、家族とのふれあいなのです。その幸せを犠牲にしては決して良い企業とは言えません。
企業の目的は「関わり合う全ての人が幸せになること」なのです。売上等々は手段なのです。私は現在「リストラ」と称して、様々な大企業が行っている合理化に心を痛めています。六十才にして何かわかりかけてきたように思っています。