或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

香山草紙 エッセイ集


  84. 久しぶりの猫

平成17年5月に私共の家族になった2代目猫ちゃん「クロ」(その由来については第62話参照)は、今や完全に女王様である。私がガレージに車を入れる と、彼女は居間の扉の前で身を潜めて私を待っている。ドアを開けるや否や私の足元に纏わりつく。私が着替えることも許さない。「マア~マア~、ニャ~ ニャ~」とにかくうるさい。私がもたもたしていると、私の足にタックルをして、時には転げそうになる。私は冷蔵庫の中のイリコを二切れ取り出し、「しんぶ ん」と叫ぶ。彼女は一目散に居間の床に放り出してある新聞紙へ走る。私もすぐにはイリコを与えず、「ありがとうは?」と言うと、健気にも私の手の甲に小さ な頭を数回摺り寄せる。私が新聞紙にイリコを置くと、あっという間に平らげてしまう。それで私の役目は終わる。気がつく頃には2階へ上がっているか、今の 時期ならコタツの中へと潜り込んでしまっている。とにかく愛想がない。
キャットタワーで寝そべっている彼女にも腹が立つ。私が「く~ろ~ちゃ~ん」と長く呼ぶと、長い尻尾を大きくゆっくり長く振って応える。反対に短く「クロ チャン」と呼ぶと、4分の1拍子くらい素早く尻尾を振って応える。馬鹿にされているのやら、遊ばれているのやら…。
時々、それも気が向けば、私の胡坐の中で腕を枕に、何十分もうたた寝をする。腕が痺れてきて、そっと隣の座布団にでも移そうとしようものなら、「アアン」と言って私の手を噛むのである。
家内が洗濯物を畳んでいると、どこからともなく現れて《お手伝い》をする。家内が「もう~邪魔せんといて」と言うと、余計に《お手伝い》をし、畳んであった洗濯物の山は崩れ去っていく。
とにかく我々夫婦はクロに完全に見透かされている。話す会話の半分くらいはどうやら理解しているようだ。最初の頃カーテンや網戸を破っていたが、繰り返し それを注意し諭すと、今はまったく破らないようになったし、私か家内がどちらか留守をする時、「今日お母さんはいないからね」と言うと、そのようにあまり わがままを言わずに振る舞うのである。
初代猫ちゃん「カーコ」同様、家からは一歩も出さず《箱入り娘》で育てている。しかし、《自立》という点においては、遥かに我々人間よりも優れている。