或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

香山草紙 エッセイ集


  79. 修・破・離

私には『十八ヶ条の憲法』と称して、企業経営に関する基本的な物の考え方を示したものが在る。その最後の十八番目に「物事は、"修・破・離"で成就されている。野焼きこそまさしく"破"であり、"離"すなわち新しい芽である」と記している。
今現在は平成の大合併で「宍粟市」となってしまったが、私の生まれ育った故郷が「宍粟郡山崎町」といっていた時分に当時の町長から依頼を受け、《明日の山 崎町を考える》という街づくりプロジェクトに参加した時のことである。そのプロジェクトのリーダーで、本職は住職だが中学校の校長も歴任された上村元正先 生に教わったのであるが、物事が成就する道程は"修・破・離"という段階を踏む。"修"とは勿論修行という意味で、先ず『修める』段階である。"破"とは 読んで字の如く『破る』『破壊』することで、色々と年月をかけて多くのことを学び、積み重ね習得したものを一度粉々に破壊してしまう段階を踏まねばならな い。今風に言うならパラダイムチェンジである。そして最後に"離"であるが、あらゆる囚われから離れ、言い換えれば『空』になり、観つめ直し、そうし得た 者だけが道を極められ本物になれると教えられた。15年以上前のことである。
私はその教えを説かれたとき、あらゆる"もやもや"が一気に晴れたことを今でも鮮明に覚えている。私はその時からである、「悩みはあるが、迷いはない」と 言い切れるようになった。我々のもっとも身近な事例で例えるなら、松下電器がある。『創造と破壊』をテーマに見事に再生させた事例はまだ記憶に新しい。私 は、成功体験など百害あって一利なしと、真剣に思っている。過去の栄光は過去なのである。我々には未来を踏まえた、《今》という現在しかないのである。
私はしばしば友人達に「お前は何を考えているか解らない」と言われる。全国で唯一総合展示場を持たない住宅販売会社、それを理解される日はまだ遠いようである。
 

●(株)日本実業出版社『経営者会報6月号(№660)』掲載文