或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

香山草紙 エッセイ集


  62. 真打登場

出会いは平成17年5月23日の午後6時30分頃だった。私は少々早めの帰宅をすると家内が『これっ』と言って、手の平にある小さな黒い塊を私に見せた。 かすかに動いている。その小さな黒い塊は、数日前から隣宅に迷い込んでいて、隣人は少々困り果てていた。隣人は我が家の愛猫『カーコ』のことを思い出し、 私の家内に話を持ちかけ見に行くと、まとわりついて離れなかったそうで、そのまま我が家に連れて来たとの事だった。私も手の平に乗せてみると羽のように軽 く、かすかに震えていた。勿論我が家の一員とし、『クロ』と命名した。
次の日、家内はすぐさま以前散々お世話になった隣町の動物病院に連れて行き、色々な検査を受け、点滴もしてもらい、子猫用の食べ物も買い求めた。今夜、こ の子が病院で買い求めた食べ物をほんの少しでも食べたら生命力があり、元気になるかもしれないが、もしそうでなかったら諦めて下さい、と言われたそうだ。 果たして彼女(女の子)は一口二口と食し、小さな声ではあるが『にゃあ』と泣いた。
あれから5ヶ月の月日が経とうとしている。夜は知らないうちに家内のベットで寝る。それも家内の腕を枕にして。時には寝返りも打つそうである。決して私と は寝ようとしない、それがまた腹立たしい。それでも朝は必ず私を起こしに来る。もう少し眠っていたい時もあるが、私は嬉しそうに起き、『カーコ』と同じよ うに新聞を取りに行く。ちょっと違うのは、新聞を持たせることを教えた。『さあ、新聞やで、持って』と言うと、前足で新聞を抱えるようにする。『イリコ』 もねだるようになった。最近家内がホームセンターで買い求めたキャットタワーを私が半日がかりで組み立てたのだが、それも充分に慣れ彼女の棲家の一つに なった。トイレも一回で覚え、私達を驚かせた。
とにかく彼女は『おてんば』である。カーテンはもちろん網戸もボロボロである。この夏はそこから虫が入り、我々を悩ませた。さほど大きくない我が家だが、 2階から1階の玄関まで10秒もかからずに走り回る。また微動だにせず外を見ている時もある。その後姿に哀愁を感じる。生まれて間もない頃から我が家の一 員となったせいもあり、完全に我々の子供だと本人も思っている。『カーコ』は膝の中で眠ることはなかったが、彼女は気持ち良さそうに背中を丸めて眠る。黒 いショートヘアに増々光沢が出てきた。私より長生きするかも知れない。
愛犬は『官兵衛』愛猫は『クロ』。『クロ』だ『官兵衛』、いよいよ真打登場である。
いよ!待ってました!