或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

香山草紙 エッセイ集


  57. ある日の会話から

私は時々友人から、
「お前は一体何を基準に考えて経営をしているのか?」と尋ねられる。
その時は決まって、
「合うか、合わないか、を基準にしている」と答える事にしている。
すると大半の者は『いいかげんやなぁ』と言うが、その内の何人かは『うん~、なるほど』と言ってくれる。
私のところへ色んな人が勉強と称して来られる。それは私が経営者として優れているのではなく、変わっていてユニークだからである。当の本人は全く認識して いなくてごく普通だと思っているのだが、他から見ればどうも変わり者に見えるらしい。住宅メーカーの販社でありながら総合展示場から完全撤退したり、1階 にギャラリーを設置し子供の絵画展をしたり、また、自社の駐車場で月1回フリーマーケットを行ったり、その他枚挙にいとまはないが、他人から見れば今の時 期、狂人にしか映らないと思う。
今、私はほとんど毎朝、約1時間かけてお写経をしている。とりあえずの目標は1千枚である。なぜ1千枚かというと、仏教の世界ではどうも千という数字は一 つの修行の目安になっているみたいだからそう決めたのである。西暦2千年にお遍路の旅に出て満願成就した。その余韻を感じながら2年前から始めたのであ る。般若心経の心は云うまでもなく、"かたよらない心""とらわれない心""こだわらない心"である。そしてあるがままに受け入れるところから全てが始ま るのである。
A社では成功しているシステムや戦略が、B社で必ずしも上手くいくとは限らない。それぞれにおいて、歴史も違うし、理念も哲学も違う。また従業員の質も量 も違うし時代も違うし、そもそも経営者トップが違う。そのような状態の中で全てに通用するオールマイティの秘策など最初から存在しないのである。まず、全 てをあるがままを受け入れ、そして何が合うか合わないかを取捨選択することが最も大切であると、私は信じて実行している。

(PHP研究所『2005年トップが綴る 仕事の指針 心の座標軸』掲載文より)