或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

香山草紙 エッセイ集


  45. お遍路日記XI

二十九番札所は『摩尼山国分寺(まにざんこくぶんじ)』である。聖武天皇の勅願によって国分寺は各国に建立され、当然の事ではあるが一国一寺であり、ここ は土佐の国分寺である。こけら葺きの屋根を持つ本堂や、風格のある仁王門にその歴史を感じる。土佐日記の作者である紀貫之が土佐から帰郷する際に、最後に 立ち寄った寺としても有名である。三十番札所『百々山善楽寺(どどざんぜんらくじ)』までは車で二十分もかからない。この札所も明治の廃仏毀釈によって一 時期廃寺になり、様々な紆余曲折の後、平成五年にようやくその決着を見、三十番札所として復活したとのことである。
五台山は全山が公園になっており、その頂上に三十一番札所『五台山竹林寺(ごだいさんちくりんじ)』がある。緩やかなやや幅のある石段の両脇は緑にむした 紅葉の並木が並んでおり、そぼふる小雨が一段とその色を引き立てている。秋にはもう一度訪ねてみたくなった。石段を上りきると向かい合って本堂と大師堂が あり、その他にも客殿、宝物殿、五重塔などが建っている。本堂は文殊堂と呼ばれ、入母屋造りの古い建築で、国の重要文化財にも指定されている。知恵を備え た御本尊文殊菩薩は多くの信仰を集めており、四国霊場唯一のものである。また竹林寺は「よさこい節」で歌われている僧、純信と鋳掛屋の娘お馬の悲恋物語の 舞台としても有名である。例の「坊さんかんざし買うを見た・・・…」云々のである。はりまや橋は現在交通の激しい通りに、赤い欄干がその面影を残している だけである。
三十二番札所『八葉山禅師峰寺(はちようざんぜんしぶじ)』のご本尊は十一面観音で、別名『船魂観音(ふなだまかんのん)』とも言われている。土佐沖を航 行する船の安全を願って弘法大師がこの本尊を刻んで祀り、以来海上交通の守り本尊として敬愛されてきた。藩主山内氏も浦戸湾から出るときは、必ずこの寺を 詣で、安全を祈願としたと伝えられている。
雨は小やみなく降りしきっている。ふと道路標識を見ると『高知道』至高松、岡山と記されている。あれに乗れば三時間もしないで家に帰れる。信じられないこ とにそんな思いがどこからともなく湧いて来た。私は慌ててその思いを吹き消し、エンジンキーを回し、カーナビを次の三十三番札所『高福山雪蹊寺(こうふく ざんせっけいじ)』に設定した。
いよ!待ってました!