或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

香山草紙 エッセイ集


  24. お遍路日記I

あまり定かではないが、30歳を超える頃からであろうか、私の中に無常と云う意識が芽生え始め、宇宙に興味を抱くようになり、無とか空と云う概念がほんの 少しではあるが解りかけてきた。その思いが40歳を過ぎるとより一層高まり、50歳を迎えた今日爆発し私をお遍路へ駆り立てたのではなかろうかと推測され る。
私は幸か不幸か父の意志を継ぎ、二世経営者としてビジネスの世界に身を置いている。大学を卒業し、数年は一般社員として、営業、工事、総務を経験し、早く に取締役(親の七光で)に就任し経営者の仲間入りをした。その間本当に一言で言い尽くせない出来事の連続であった。勿論今後も想像もおぼつかない事柄が待 ち受けていると思うが、とにかく私は四半世紀に渉って経営者として、良くも悪くも生きてきた。誠に無責任な話だが、その時々においてこれが最良の決断であ ると信じ行った事が、後年振り返ってみて最悪だった事など枚挙にいとまはない。私はその分だけ、いやそれ以上に罪を犯している事になるのである。そんな積 年の思いと、ここ1~2年、今一つ業績が伸び悩んでいる反省が遍路へ旅出させた引き金となった。
四国には、お四国と四国とがあるそうだ。お四国は場所的、地理的には四国であるが、お四国と四国とは全く違うのである。何が違うかと云うと、空間が違うの である。私も初めは何の事かさっぱり解らなかったのだが、その事を後になって感じるようになるのである。私もこれまでに何度か四国の地を踏んだ事はあった が、その場合は四国であって、お四国ではないのである。お遍路として四国を訪れた瞬間から、四国はお四国に変わるのである。つまりお遍路さんには、周りの 人、例えばタクシーの運転手、食堂の女店員、旅館のおかみさん、道行き交う人々、風景も人間もこの世に存する森羅万象全てがイメージチェンジし、お四国に 変ずるのである。
2000年4月17日午前7時、私はたった一人、自分の生まれ育った山崎を後にし、ワクワクする思いと不安が交錯する中、第一番札所・阿波徳島、霊山寺に向かって出発したのである。
今まで味わった事のない異次元空間を求めて…