或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

香山草紙 エッセイ集


  22. これが最後の猫について

今日は朝から欠伸ばかりしている。出社してからもそうである。秘書(生意気にも昨年4月より置いている。最初は秘書に秘書がいるようだったが、1年も経過 すると今は何故もっと以前から置かなかったのだろうと思うようになった。第一、無意味な電話は一切シャットアウトできるし、自分で朝の紅茶やコーヒーも入 れなくて済むし、コピーをしに階下へ行く事も無くなった。本当に無駄な時間を取られなくなった。その分自分の時間が持てるようになったかというと、それが 結構多忙になってくるのだから皮肉なものである。それでも心のどこかでは分不相応だと自覚し、多少世間に気は使っている。まぁ、孤独な経営者の可愛いわが ままだと許して欲しいと思っている)にも、「寝不足ですか?」と言われた。
理由は我が家の愛猫『カーコ』である。はっきりは覚えていないが、午前4時頃から家内の部屋と私の部屋とを何十回となく往復したはずである。家内は畳ベッ ドで寝ているのだが、ドアは開けぱなしである。私は布団で休んでいるが、引き戸を15センチ位開けたままにしている。それを『カーコ』は、自分は充分に睡 眠をとっているものだから、私達が眠っているのが面白くなく、それに空腹も手伝って起こしに来たと推測される。
どちらが根負けするか、私は無視する事にした。すると『にゃあ~、にゃあ~』に、壁や襖に爪を立てる『カリ、カリ、ガリ、ガリ』が加わり、おまけに頬をあ の"ざらざら"の舌で舐め回すサービスがプラスされると、もう私の負けである。彼?は私が意識して無視しているのをとっくにお見通しであり、そのうち私が 折れるのも承知なのである。
全く腹の立つ『やつ』である。
私は捕まえて布団の中に押し込んだ。2~3分位はおとなしくしていたが、私の腕からするりと抜け出すと、階段を一気に駆け下り、また駆け上がり私の枕元をぐるぐる歩き回り始めた。
少々早いが私は起きる事にした。彼?は私の足元へ来て、私が階段を下りるのと同じスピードで、まとわりつきながら1階へ下りて行った。トイレに行くとつい て来る。「新聞、取りに行くか?」と言うと、玄関の土間で待っている。抱えて新聞を取りに行き玄関ホールまで戻ると、ドンと飛び下りる。私がスイッチの 入っていないコタツにずり込み新聞に目を通し出すと、全く何事もなかったかのように、テレビの上にジャンプし眼を細める。
彼?は自分は猫だとは絶対に思っていない。