或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

香山草紙 エッセイ集


  101.歌舞伎鑑賞Ⅲ

『成駒屋』という有名な屋号は、『歌右衛門』が本流である。『歌右衛門』が亡くなっているので、いずれは『芝翫』(昨年10月に死去された)が名を継ぐと思うのだが、そうすると『福助』が『芝翫』を襲名することになるのだろう。
『鴈治郎』は『坂田藤十郎』を襲名し、屋号は『山城屋』へ変わった。この名跡は231年も途絶えていた大名跡で、それを復活したことは、誠におめでたい限 りである。『藤十郎』は「近松」の世話物を演じたら天下一品であり、そこをとことん極めて欲しいと、人間国宝に向かって少々生意気だが、私はお願いする次 第である。
また、『吉右衛門』のスケールの大きさには、ただ感服するのみである。『勧進帳』は『幸四郎』の十八番のように言われていて、事実演じた回数も1,000 回を超えたそうだが、私は『吉右衛門』の『勧進帳』の方がはるかに好きである。花道から「飛び六方」を踏みながら奥へ引っ込む『播磨屋』の方が、ずっと迫 力がある。どうも『高麗屋』は好きになれない。『吉右衛門』の『一条大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)』も、何度でも観たい演目の一つである。
歌舞伎界に一大旋風を起こした『澤瀉屋(おもだかや)』の『猿之助』(亀治郎が猿之助を襲名し、香川照之が歌舞伎界に入る、という突然のニュースで我々を 驚かせた)が、体調を崩したままなのは寂しい限りである。スーパー歌舞伎で一斉を風靡し、宙乗りの醍醐味を我々素人にも楽しませてくれた。渋いところで は、『黒塚』は、ぜひもう一度観てみたい演目の一つである。早く元気になられるのを祈っている。
歌舞伎を度々観ていると、面白いハプニングに時々出食わす。あれは5~6年前だったと思うが、大阪の「松竹座」へ行った時のことだった。「歌舞伎講座」と 称して、『翫雀』が歌舞伎の面白さとか、鑑賞のポイントや決め事などをわかり易く解説し、その後に歌舞伎のひとコマを観客が演ずるというコーナーがあっ た。「誰か出てみたい人はありませんか?」と声をかけられたので、私は「は~い」と言って一番に手を挙げた。すぐさま舞台裏へ呼ばれ、男は「女形」にな り、女は男装するという設定になっていた。私は「傾城」になり、女性は「若衆」のいでたちで、舞台中央に船に乗ってせり上がったのである(もう、かっこい いと言ったら…)。あの爽快さは、今も忘れることができない。以前から、一度歌舞伎の舞台に立ってみたいと思っていた。夢は念ずれば叶うものだと、しみじみ思った。
私の気ままな「歌舞伎鑑賞」はまだまだ続く…。