或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

香山草紙 エッセイ集


  100.歌舞伎鑑賞Ⅱ

平成17年5月、『勘九郎』は『勘三郎』と名を改め、十八代目を襲名した。先代を生で観る機会はなかったが、テレビで観た『一本刀土俵入』の1シーンで、 『茂兵衛』と2階にいる『歌右衛門』の『お蔦』との掛け合いを何故か鮮明に記憶している。『歌右衛門』の舞台は何回か観たが、花道から出てくるだけで、そ の辺一体が独特のオーラに包まれたものである。
当代『勘三郎』の良いところは、とにかく全てに一生懸命に取り組んでいる姿勢である。彼は踊りも上手いし、『三津五郎』との軽妙なやり取りも良いし、『髪 結新三』も『怪談乳房榎』の早変わりも何回でも観たい。また、野田秀樹や串田和美との新作歌舞伎にも積極的に取り組んでいる。芸の幅が広い。願わくは天才 と謳われた先代の深さを極めて欲しい。これからの歌舞伎界を背負う人物であることに間違いない。
忘れてならないのが『音羽屋』(七代目尾上菊五郎)の存在である。『白浪五人男』の見せ場である『浜松屋店先の場』で、「もう化けちゃあいられねえ」と啖 呵を切って言うあの名台詞は、『音羽屋』以外の人に言って欲しくない…などとついつい思ってしまう。私は「浜の真砂と五右衛門が歌に残せし盗人の種は尽き ねぇ七里が浜、その白浪の夜働き…」を諳んじて、時々宴会の席でカラオケ代わりに披露したこともあるほどである。大向こうから「いよ!音羽屋」と威勢のい い声が掛かりそうである。
上方歌舞伎といえば『坂田藤十郎』のことのように思っている人が多いが、私は『松嶋屋』が本流だと思っている。平成10年に『孝夫』が『仁左衛門』を襲名 したが、三男が継ぐというのも珍しいことである。先代の『仁左衛門』の最後の舞台を、偶然に顔見世で見られたのはラッキーと言うしかない。舞台に立ってい るだけで存在感を感じる役者だった。現在の十五代『仁左衛門』は大変華のある役者で、大病も克服して、上方歌舞伎には欠かせない存在である。
少し脱線するが、私のホームコースである上月カントリーの腐れ縁のオーナーの母親が、『松嶋屋』の大タニマチだったそうで、今でも『仁左衛門』は「お母さ ん」と言って慕っているそうである。名誉のために言っておくが、お母さんは大変立派な人物である。仮にも『松嶋屋』のタニマチに誰でもなれるわけがないこ とくらいは私でもわかる。
(次話へ続く)