或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

或る二世経営者の挑戦


第二部 ~豊かさと自由を求めて~


第三章 中長期計画を作ってみた

《全く信じられない事だが、当社には中長期計画なるものが存在していなかった。正確に言えば、私以外の誰にも知らしめていなかったと言うべきであろう。し かし、私の中には当然の事だが存在しており、視点を変えて言えば私の中は殆どそれで一杯である。この度私の中に、アトランダムにしかもぼんやりと詰まって いた中長期計画なるものを、様々な人の助けを借りて引き出してもらい整理して頂き、纏める事が出来たので紹介し、諸君の理解を強く望むものである。
ここでその経緯について少し述べておく。1998年5月8日に、西暦2001年に株式市場に上場する事を目的とした"2001"と云うプロジェクトが発足 した。それから1年間、野村総研からマーケティングのスペシャリストと、元辣腕アナリストの2人の方に、毎月1度来てもらい、株式公開についての様々な知 識を学んだ。少なくとも我々は知識の上では、ほぼ完全に近い形で身につけたと思ってる。
その後、メーカーとの整合性の一致を見るに至らず、2001年上場を2004年に取りあえず変更し、上場を目指す為の準備のひとつでもある資本金の増資プ ロジェクトに方向転換した。1999年9月に増資が一応完了したので、更にこの2001プロジェクトチームを中長期計画策定チームへと変換したのである。 思えば度重なる変更に、プロジェクトメンバーはよく耐えてくれたと云うのが、私の偽らざる心境である。
チームを3つの小委員会に分けた。ひとつは福利厚生面から思考した中長期計画を立てて頂いた。もうひとつは財務を中心にした観点から中長期計画を考察して もらった。今ひとつは事業戦略をどう構築するかという命題について、様々な論点から回答を頂いた。何度も何度も集まり、議論を重ね、時には深夜にも及ぶ事 も多々あった。私はただそれを取捨選択しただけの事である。改めてここにメンバー諸兄に深く感謝すると共に、この計画書が単なる計画書に終わらぬように、 私自身も最善の努力を惜しまない事は勿論、諸君の深い理解と協力を再度お願いするものである》
上記は中長期計画書の冒頭に記した巻頭文である。文面から察するとさらりと書いているが、実際は各チームから提出されたものを、一冊の計画書に纏め上げる 作業は困難を極めた。時間もかかったが、肩もパンパンに凝ってしまった。膨大な書類の山を前にして私はほとほと困り果て、何から手をつけるべきか算段がつ かなかった。3日もあれば十分だと高を括っていたが、2日が経過しても一行も進まなかった。私は視点を変え、パソコンの前に座るのを止め、屋上に出て見た りゴルフクラブを振ったりし、リラックスしてみた。私は余りに細かい事に拘っていた事に気が付き、もう少し大きな視点で物事を捉えてみた。早い話がヘリコ プター人間になるのを忘れていたのである。

一:スローガン
   《心の豊かさと自由を求めて》
二:目的
   ・ 損益分岐点50%の企業
   ・ 業務を通じて自己を確立し人生の轍を刻む
三:方向
   ・ネットワーク企業群の創設(自立から独立へ)
四:前提となる戦略的思考
   ・ C.S(顧客満足)の根底はE.S(従業員満足)である。
   ・ One To One思考(あなた1人の為のマーケティング)
   ・ I.Q(知能指数)よりもE.Q(感性指数、あるいは思いやりの心)
   ・ 市場・商品シェアからエリア・顧客シェアへ
   ・ 創出された住まい(健康・快適住宅)
   ・ 地域に融合した企業(対外的広報活動)
   ・ 環境保全

これだけの事を一気に書き上げた。一から三は私の中では出来上がっていたので、ポイントは前提となる戦略的思考をどう考察し結晶化するかであった。
ここまで出来上がれば後は作業的な思考で創り上げることが出来た。具体的な項目としては、経営数字と、戦略的実施項目と、内部的実施項目の3つの大項目に 分類した。経営数字は、「受注」「着工」「売上」「粗利益率」「粗利益額」「一般経費額」「営業利益額」「損益分岐点」「借入金」「株主資本利益率」「配 当率」「自己資本率」の12項目について年代を追って示した。戦略的実施項目については、「ONE TO ONE戦略」と「紹介受注比率」と「創出された住まい」を中項目としそれぞれについて書き記した。ONE TO ONE戦略は、FNA情報システムとデリバリーサービスと顧客シェアー100%の3本柱で組み立てた。紹介受注比率はネットワーク作りをどうするかについ て説いた。創出された住まいは、高付加価値住宅と環境価値創造住宅作りをメインにした。内部的実施項目は、「EQ指数の高い企業」「組織開発」「地域に融 合した企業」を中項目とし、理解を求めた。EQ指数の高い企業は社内座談会を中心に、組織開発はネットワーク企業とは?を明確に指し示し、地域に融合した 企業は従来の広報活動に加え、新たにエコ委員会を設置した。多少自画自賛的では在るが、解りやすい楽しい計画書が出来上がったと思っている。
従来なら作成すればそれは勝手に推進されていくものと勘違いして放置してしまうのだが、様々な痛い経験をいやというほど味わってきた者としては、作成より も寧ろどのようにして推進するかのほうが遥かに困難なことかくらいは、いかにおめでたい私でも解っていた。私はすぐさま中長期計画推進プロジェクトチーム を結成し、それぞれのメンバーひとりひとりの担当役割を明確にした。列記すると、社内座談会の担当は中田課長、エコ委員会担当中本次長、デリバリーサービ スは秋山係長、FNA戦略担当兼中長期計画推進プロジェクトチーフ本山取締役、21世紀の住まいづくりは私、カーペンターズ兵庫設立準備兼コストダウン実 施会担当丸太部長、デリバリー兵庫設立準備担当木田部長、中長期計画推進プロジェクトサブチーフ兼ネットワン担当水田次長、中長期計画推進サンライフ事業 部担当山本次長、中長期計画推進戸建事業部担当川田係長、中長期計画推進戸建事業部兼マップ会担当稲本係長、中長期計画推進サンライフ事業部担当西田主 任、中長期計画推進情報推進部兼書記担当宮野社員、のメンバー諸君でスタートした。毎月各担当から進捗状況を報告させ、それに基づき私がコメントし指示を 出している。遅れていたり、少し違った方向に進んでいると感じたら、そのプロジェクトに出席し軌道修正をしている。今のところ多少ばらつきは在るものの、 動き出したという感触を得ている。現在これが私の仕事の3分の1を占めている。もう3分の1は当たり前の事だが日々の業務の進展で、残りの3分の1は、 ボーとしている時間も含めた自分自身の為に時間を持つことである。
『経営とは実践なり』『企業はトップそのものなり』実感の日々である。

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