或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

或る二世経営者の挑戦


第二部 ~豊かさと自由を求めて~


第三章 ジャズバンド組織

いよいよ実行に移す時が来た、と感じた。私は戸建事業部内の4人の部長と常務を呼び、組織改革の必要性を説いた。
「今の組織、すなわち営業、工事、設計と言う縦割り方は、自分達からのみ見た所謂得手勝手な組織である。例えば、お客様が工事の進行状況について知りたい と思って会社に電話してこられたとしよう。運悪く工事担当者が留守で設計担当者しかいなくて、『大変申し訳ありません、工事担当者はただ今留守をしていま す。帰りましたら電話させます』と言うだろう。それが当たり前になっているところが怖いのである。そうではなくて『工事の○○はただ今外出しております。 ○○時頃には帰社の予定ですが、私で分かる範囲内のことでしたら代わってお伺いします』と言う組織にしたいのだ。つまり営業、工事、設計を一緒にした小集 団を作るのである。そしてチームでお客様に対応するのだ。お客様本位の組織にしたいのだ。当然効率は悪くなるだろう、生産性は落ちるであろう、でも今から は効率を求める時代ではないと思うのだ。効率よりはCSである」と私は言い、10月1日に行うと伝え、その名称をジャズバンド組織と命名した。
先ず彼らにジャズバンド組織(以下JB組織と呼ぶ)のバンドマスター、即ちチームリーダーに相応しい人物を期日をきって推薦させた。彼らは5~6名しか推薦してこなかった。私は、
「これはどう云う事?たったこれだけしかいない訳?お前達の信頼できる部下は。よくそれで部長やなどと大きな顔しているなあ。私は少なくともお前達に 7~8割任してるつもりやで。そうと違うか」おそらくもっと口汚く叱ると言うよりは罵ったと記憶している。もう1週間時間を与えるから、推薦をしなおして くるように伝えた。その1週間後、出てきた名簿は15~16名だった。私は満足げに『これくらいは出てこないと』と言った。1998年5月の事だった。
6月初めの方針発表会の終了後、戸建事業部全員を残し、しかる後各部長と推薦を受けた者をその場から退場させた。残った者に、各部長達と推薦された人達の名前を記した書類を配布し、
「ここに名前が書いてある人と是非一緒に仕事がしたいと思われる方は、名前の下に( )がありますが、そこに○を付けて下さい。但し、3つ付けて下さい。 多くても少なくてもだめです」と言った。つまり部下に上司を選択させたのである。すぐ集計し、○が5つ以上ついているものを選ぶと、13人になった。こう してJB組織のバンドマスターは決まった。
それから約1ヶ月ほどたって、13人のバンドマスターを集め、
「お盆休み明けまで君達に時を上げよう。その間に以下のことを考えておくように」と伝えた。拠点の選択、つまりどこで事業を行いたいか、決めておくこと。 もちろん拠点は8つしかないのだから君達は13人だから、ダブりもトリプルも基本的にはOKだが、よく考えて決めること。次に自分が誰と一緒に仕事がした いか、チームのメンバー構成も考えておくこと。当然取り合いになる人間もあると思うが、そういうことに余り拘らないで自分本位で良いから考えておくこと。
お盆休み明け、早速13人のバンドマスターを集めて、拠点の決定とメンバー構成について討議した。拠点についてはすぐ決まった。淡路1,明石1,加古川 2,姫路北3,姫路南1,社2,相生2,山崎1,合計13の拠点が誕生した。メンバー構成については、あらかじめ用意しておいた一人一人のやや大きめの名 札を私が掲げながらその人の名を呼び、その人物を欲しいマスターたちが挙手し、順に決めていった。当然たくさんの手が挙がる人もいればそうでない人もい る。その調整役を私が引き受けた。午後からはじめて、最初の予想では深夜近くまでかかるかもしれないと思っていたが、8時ごろにはすべて終了した。行いな がら私は段々気が滅入ってきた。行う前はグッドアイデアだと思っていたが、やり始めると何か人身売買のような気持ちになり、憂鬱になり、二度とこのような やり方はすべきでないと心に刻み込んだ。(申し訳ない、御免なさい、今この紙面で心から謝ります)
最後に、
「この組織で1年半は何があっても行う、私も辛抱し見守っていく、その間にJB組織の何たるかをよく理解し、完成させるように」と言った。私は約束どおり 1年半は見守った。しかしその1年半の間に、JBの中でさまざまな変化がおきてきた。良い演奏をしているJB,もう少し時間を与えればよい音色を出しそう なJB,演奏者を入れ替える必要があるJB,不協和音だらけで解散しなければならないJB等々である。
2000年4月に大幅な組織改革を行い、現在に至っているが、その完成はまだまだ遠い。しかし21世紀になっても十分通用する組織であると自負している。 何故かといえば、目線をお客様に合わせた組織だからである。取りも直さず21世紀は顧客が主体なのである。それを解ることが最も大切なのであるが……

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