或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

或る二世経営者の挑戦


第二部 ~豊かさと自由を求めて~


第一章 今期の目玉はどうなっているのか?

新しい期(第16期)に入って、どうも特に戸建事業部内において組織が上手く働いていないように感じていた。組織を少し変えたのが(地域別に2部門に分け ていたのを一つに纏め、第一事業部長だった山脇をアパート即ちサンライフ事業部長にし、第二事業部長だった細田を戸建事業部長にし、サンライフ事業部長の 川上は新たに事業本部室を作り、粟倉常務の補佐的な業務を担当させるようにしていた)それが原因だろうと思っていた。だから1ヶ月もすればそのうち落ち着 くと甘く考えていた。
営業だけでなく、工事も設計もより前線に出て行き真のCS運動を展開しよう、というのが今期のテーマで、特に設計は大変乗り気で、『設計者にも紹介が貰える』を最大の目標にしていたのである。
私が感心する、と言えば妙な言い回しかも知れないが、当社の営業は打たれ強いと思っている。例えば、お客様のクレームは先ず営業に来る。その7割から8割 くらいまでは営業担当者が出ていって解決してしまう。当時はまだ1年に1~2件程は私の処にまでクレームがきていたが(今は全くと言っていいほど私の処ま で上がってくるものはない)、残りの2~3割は上司が問題を解決してしまう。そして更に偉いと思う事に、クレーム対応について愚痴を言わないし、又他の部 署の者(工事管理者や設計者)の所為にしたりして、文句を言わないのである。以前はそんな風潮があったが、私が口を酸っぱくなるほど繰り返し繰り返し、
「あらゆる選択は自らがしている。問題を他責しても解決も発展もない。自責にしてこそ始めて解決もするし成長もある。第一自分の身に降りかかってくる問題 とは、解決できる問題しか降りかかってこないのだ。それが証拠に君に世界経済や民俗紛争による戦争などについて、相談があったり、考え過ぎて寝られなかっ たりした事があるか?解決出来ないのは、今出来ないという時期的な事か、自分一人では出来ないという人的な問題か、今の方法では無理という方法論の問題 か、である」
と、事ある毎に言い続けたのである。本当にしつこく何十回、「またその話か」と皆が嫌になるくらいあちらこちらで言い続けた。私は他人とはこちらの話を聞 いていない、と思っているタイプである。正月も過ぎて3ヶ月程経過した頃、当社にもいるが、特に幹部と名のつく者が、「新年の挨拶の時に申し上げました が」などと、朝礼などで言っているのを聞くと、腹が立つのを通り越して滑稽になる。
私は杉村女史と村田という女子社員を個別に呼んで色々と尋ねてみた。結論から言えば『より前線にシフトし、設計者に紹介が貰える』というスローガンは、設 計課員全員の意志ではなく、むしろ大半の者はそんな気持ちがなく、或る一人の人間に引っ張られてしまった。というのが本当の処だった。彼女達にもう少し詳 しく聞いてみると、
「おっしゃっておられる意味はよく分かりますし、とても大切な事だと思いますが、現状はその前にしなければならない事が沢山あります。例えば、基本的な構 造や積算とかプランニングも充分解ってない者が多くいますし、まだまだインテリアの勉強もしなければなりません。それからだと思うのです。お客様の処へ出 るのは」
当に正論を言った。完全に防衛機能が働いていると感じた。命令的に進めてしまうのは簡単である。しかし全く効果は期待できない。その様な失敗は嫌というほど重ねてきている。
「そうかそうか、君らの言う事も一理ある」と言って、その場は引き下がった。が実はこれらの事がその後私の中で燻り続き、最終的には4年後、ジャズバンド 組織と云う形になって現れてくるのだが、当時は私自身も知る由もない事だった。
私はこのままでは今期の目玉はどうにもならない、何とかしなければ、と悩んだ。研修しかないと思い、すぐさま担当の部長を呼び相談をし、設計と工事の研修 を隔月毎に行う事にした。講師は勿論私である。がしかし、始めようとした矢先、7月にとんでもない事が起こり、研修どころではなくなってしまったのであ る。

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