或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

或る二世経営者の挑戦


第一部 ~君は父親を越えられるか~


エピローグ

経営とは?と問われたら、私は躊躇無く、[実践である]と答える。経営とマネジメントと混同している者を多く見受ける。経営とは、経営学でもないし、管理 でもない。実践そのものである。当然、経営者とマネージャーとは全く異質の物である。いくら、立派な計画書を作成しても、素晴らしい企画を立案しても、実 践が伴わないのは経営ではない。私は、この10年でそれが痛いほど解った。思うに、7割から8割が失敗の連続であった。上手くいったと云うのは、せいぜい 2割か3割である。その時々はこれが最高だと思っていた事が、これしかないと思っていた事が、振り返ってみると、様々な過ちを繰り返している。その責任の 全ては私にある。宿命的ないたずらで、私は父の後を継ぐ事になったが、決して悔やんだりはしていない。むしろ感謝している。普通のサラリーマンでは味わえ ない、いろんな経験をさせて貰ったし、今後も私の想像もつかない、事態に遭遇するであろう。私は、また迷うであろうし、悩むであろう。しかし、私は、先ず 自分自身の為に、両親も含めた自分の家族の為に、社員の為に、お客様の為に、下職の為に、世の中の為に、精一杯尽くす事を約束する。
私には二つの哲学がある。一つは[やかんの哲学]であり、もう一つは[めぐりあいの哲学]である。
[やかんの哲学]は大学生の時確立した。冬のある寒い日に洗濯をしていた時の事である。洗濯機などなかったので、ポリ製のたらいを使っていたが、水は冷た いので、やかんで湯を沸かし、それをたらいに入れ、水を注ぎながら洗濯をしていた。1回の洗濯に5~6回は湯を沸かさなければならない。ある時、やかんの 取っ手が熱い時と、そうでない時があった。図を描けば分かり易いのだが、熱伝導の理屈で、取っ手が熱くなったり、ならなかったりするのである。熱い、熱く ない、が体験であり、熱伝導の法則が理論である。すなわち、理論と体験が一致するべきである、と云うのが[やかんの哲学]なのである。理論だけでも、体験 だけでもだめである、と云うのが私の考え方なのだ。
[めぐりあいの哲学]は、27~8歳の頃、宇宙と云う概念に興味を持ち始めたのがきっかけで、確立した哲学である。150億年前に、ビックバーンによって 創造された宇宙。その果てしもない宇宙の中に、銀河系があり、その中に太陽系があり、地球があり、日本があり、この自分が生まれた地がある。ましてや数え 切れない物体の中で、生物として、動物として、哺乳類として、人間として生まれ、この地でめぐりあうのは、まさしく天文学的奇跡と云うしか言いようがな い。しかし私は、そのめぐりあいを、必然だと信じているのである。だから、そのめぐりあいをより一層大切にしなければ、と思っている。それが[めぐりあい の哲学]である。
私は、57~60歳で現役を退き、自分の生まれた富山町に、学校と美術館を作りたいと思っている。その横に茶室と小さな自分の家も作りたいと思っている。 学校はどんな学校かと云えば、年齢制限も教える科目もない、自由奔放な学校を作りたい。学校と云うより、私塾と云った方が適切かも知れない。その私塾は、 来たいものだけ来ればいいし、来たものは自分のやりたい事だけ、すれば良いと考えている。それら全てに対応できる先生を揃えようと思っている。だから私 は、その為に強力なネットワークを作っておかねばならないのである。水口先生がおっしゃっておられる「ホロンネットワーク」を作る必要があるのだ。美術館 は勿論「池内美術館」である。私は、池内先生の絵は、私の知る限りにおいては、最高にすぐれた絵画であると思っている。当然お金が要る。私の給料や退職金 ではどうにもならない。作詞家を諦め、講演家にもなれそうもない私は、いかにして資金を確保するかが、最大の問題である。でも、そのうちお金くらい何とか なると思っている。自分が強く望むことは実現すると、信じているからである。私の頭の中では鮮明に全てが出来上がっている。
いよいよ最後になってしまった。サンホーム兵庫に来て、最初に情けなく思ったのは、銀行で借入する時だった。借入申込書と手形を持っていくと,「いくらで もお貸しします。大変申し訳ありませんが、ここの保証人様の欄に、社長様つまりお父様の個人保証をお願いしたいのですが。いいえ、副社長様だけではだめだ とは言っていません。念のためです。念のためにお願いします」私は、悔しく思ったが、致し方なかった。今では、父の保証は勿論、私の個人保証もなしに、い くらでも貸して戴ける。でも出来るだけ借りたくない。借金のない会社にしたいと思っている。
今後の十年を考えるために、今までの十年を振り返る意味で書き始めたのだが、思わぬ長い振り返りになってしまった。今、現在平成5年10月31日である。 私は、全ての真実は語らなかったが、嘘は一言も語ってはいない。名称、氏名等は殆ど仮名である。


再  見


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