或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

或る二世経営者の挑戦


第一部 ~君は父親を越えられるか~


第一章 二人の部長

私が新光工事から連れてきた13名を加えて、当時新光ロイヤル住宅の社員は50名位だった。私は代表権を引っさげて颯爽?と、新光ロイヤル住宅にやってき た。私の心の中には、会社を立て直さなければならない悲壮感はなかった。むしろ希望に燃えていたといっていい。これ以上悪くなりようがない、やればやるだ け後は良くなるだけだと云う、一種の居直りに近いものがあった。私は二世経営者であり、後を継いでも順序的にいっても誰一人文句を言うものがいないはずで あった。しかし、何か雰囲気がおかしかった。新光ロイヤル住宅の社員がどうも私を全く信頼していない様子だった。お手並み拝見しましょ、こんな悪い時期に 誰が来ても変わらない、良くなる筈がない、と云う社員の意識を端々に感じた。特に二人の部長に強くその意識を感じた。
当時の組織は、私の下が直ぐ部長で、役員はいなかった。粟倉部長は、私より6つ程歳上で井上部長は私と同い年であった。粟倉部長が商圏の東地区の営業を担 当しており、井上部長が西地区の営業を担当していた。私は勿論二人の部長の協力なしで新光ロイヤル住宅の再建はありえないと思っていたので、何かにつけて 話し合いをしながら進めていった。しかし、二人からは余り積極的な発言はなかった。表面上は協力をしてくれたが、私は何か物足りなさを感じていた。
私は社内重要遵守事項を、二人の部長とメーカーから出向してきていた社員とで作り、特別通達事項として全員の社員の前で朗読させた。内容は、営業とはどう あるべきか、工事管理者は何をすべきか、設計の業務とは、総務はこう在るべきである、アフターの仕事の仕方はこうである、などを記した、今考えると赤面し そうな物だった。しかし、その時井上部長が握っていた、殆どの決済権を奪うのには役に立った様な気がする。
そんな作業を通じても私の不満やいらだちは一向に解決しなかった。どうしたら二人の部長を始め、その他の従業員が私を認め協力的になるのか、悩み続けた。 振返って思うとそれは当たり前の事だった。34歳の若い何の苦労も知らないお坊ちゃまの二世経営者に、自分達の大事な人生を任すはずがないのである。立場 を逆にして考えてみれば理解出来るのだが、そんな余裕など当時の私にはなかったのである。私は唯一、代表権と云う権力で、親父の傘の下で、社員を動かそう としていたのである。
私の結論が出た。実績で動かすしかない、行動で見せ付けるしかない、そう思うと楽になった。後は何をどうするかだけである。その日からやるべきことが何か、を考え探し求める日々が続いた。それは意外と早く見つかった。
この、二人の部長は今は、二人の常務になっている。

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