或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

或る二世経営者の挑戦


第一部 ~君は父親を越えられるか~


第三章 100億企業はすぐそこ

私がその気にさえなって本格的に動いていたら、既に100億円企業になっていたかも知れない。と云うのは、兵庫県にサンホーム神戸と云う協業会社が、もう 1社ある。その会社との合併の話が、2~3年前から持ち上がっていたのである。社長はかなり乗り気であったが、私自身が消極的であった。サンホーム神戸と 云う会社は、[外人部隊の功罪]と云う項で記したが、メーカー資本100%の法人である。その前身を溯れば、父が一時期社長として勤めた会社で、父にとっ ては全く無関係ではなかった。そんな関係から、父は多少未練があったのかも知れないが、私はサンホーム兵庫との合併話については、のらりくらりと逃げてい た。この話が持ち上がった頃は、サンホーム神戸の方がむしろ当社より、表面上の数字は良かった。「うちはまだまだ力がありませんから」とか「私はそんなに 広い範囲を見る能力はありませんから」とか、言って興味を示さなかった。私は唯なんとなく、本当になんとなく、合併が嫌だった。取りたてて根拠があった訳 ではない。勘である。結果としては、合併しなくて良かった。もし実現していたら、呑気にこの様な、四方山話を書いている暇はなかった。少なくとも月の内半 分位は、神戸にマンションでも借りて、業務に追われる毎日だったであろう。先の事は解らないが、当分私は合併する気はない。大阪では、誰が考えても無理な 合併をし、様々な問題が発生して頭を抱えているようである。企業は規模だけではない。特に売上だけではない。中身である。貸借対照表も損益計算表も勿論大 切だが、それに表れない資産も大切である。私は、よく言うのだが、利益とは出すものではない、出るものである、出るような仕掛が必要なのである。
今期のサンホーム兵庫の目標は[受注72億]である。単純明快誰でも解る目標である。当社の期の初めの方針発表会のやり方は、ここ数年同じ方法をとってい る。先ず、2月の経営検討会に、私がB4一枚に纏めた内容を提示する。それには、来期の目標がひとつと、その目標を達成するための方針が、7~8つ記され ている。その各々の方針について、5~6項目の具体的な行動指針を示している。それらについて2月の半ば頃に、部長以上の者を集め1泊2日で合宿し、部の 方針、具体的施策を作成し、それを部に持ち帰って、最小単位のグループに落とし込む。どんな職種の人でも、我が社の方針発表会に出席して貰えれば、その浸 透度がよく理解して貰える筈である。但し、中身は頗る幼稚である。こんなもので本当に1年間やっていけるのか、と思われる程お粗末である。私が言うのだか ら間違いがない。私は、考えつく事は必ず実現出来ると思っている。逆にまた、考えられる事しか実現しないと思っている。いくらレベルの高い事を要求して も、実際に業務を行う者が、考えられなかったら実現しない、と思っている。考え付くようにヒントは提供するが、答えは各自で解答してもらう事にしている。
今期の当社の目標は?と社員に尋ねたら、半分位の者は[受注72億]と答えられると思う。たった半分の者!とおっしゃるかもしれないが、試しに他の会社で 同じ質問をしたら、半年以上も経過した時期では、恐らく半数の社員も答えられないと思う。
当社もやっと受注ベースで経営数字を考えられるようになった。当たり前の事かも知れないが、受注計上したものが着工へ繋がっていく、我々の業界の専門用語 で言えば、着工率がようやく95%以上になったのである。正確には、当社は97%である。様々な理由で年間3%くらいはキャンセルになる。受注ベースで経 営数字が組み立てられると云う事は、日頃の戦術を色々と練る事が出来るし、時間的に余裕が出来る。と云うのは、受注してから、着工、完工迄の期間が、通常 だと6ヶ月から9ヶ月かかる。着工ベースで経営数字が捉えられないと、全く泥縄で経営を行わなければならない。自然と、打つ戦術や、基本的な戦略も異なっ てくる。人間余裕がなくなると判断を誤ってしまう。受注の精密さは、住宅業界では生命線である。当該月の契約がたまたま悪くても、焦らずじっくりと考えて 戦術が打てるのである。当たり前の事が、なかなか当たり前に出来ない処に経営の難しさがある。私は、数々の失敗で、それが嫌と云う程腹に染み付いている。
何故今期の目標を[受注72億]に掲げたのかと云うと、私は、3~4年以内に、年商100億にもっていきたいからである。そして、当社にその力が付いてき たと思っているからである。私は、その確かな手応えを感じ始めている。本当の実力が付いていないのに、数字だけが一人歩きをしても何の意味もないが、当社 は100億企業の仲間入りをしてもいい時期になった、と判断したからである。その理由としては、人が育ってきたのを、膚で実感し始めたからと言っていい。 企業は人なり、とは言い古された言葉ではあるが、私にとってはいつ聞いても新鮮な言葉である。
今年、万が一目標である[受注72億]が達成出来なかったら、私は当分100億企業を諦めるつもりである。私が、サンホーム兵庫と云う会社の力を過大評価 し過ぎていたのだと思って、きれいさっぱり諦める。それくらい今年の目標については思い入れがある。72億が達成出来たら、当然受注残として50億を期首 に持ち越すことが出来る。50億の持ち越しがあれば、来期の売上70億は充分可能である。そこまで行くと100億が見えてくる。実は私のイメージの中では 既に鮮やかに達成している。瞼を閉じれば、全社員と喜び合っている光景が、浮かんでくるのである。

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