或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

或る二世経営者の挑戦


第一部 ~君は父親を越えられるか~


第三章 ゼロベース改革推進

貧すれば鈍する、と云う諺がある。ゴルフでもそうだが、なんでもないパットをはずしパーを逸すると、次のホールでのティショットが狂い出す。ティショット がラフや斜面へいくと、セカンドショットを無理して、またスコアを崩す結果になる。気が付いたら1ラウンドが終わっていた、などと云う事は日常茶飯事であ る。ゴルフなら「今日は調子悪かった」で済むが、企業の経営はそうはいかない。
思い当たる節が何回もある。功を焦るあまり、打った手が更に悪い結果を呼んでしまうのだ。今思い起こしても冷汗の連続だった。私は、他人から「会社の景気 はどう?」と聞かれた時は、いつも「まあ、ここ1年位は潰れないでしょう」と答える。「またそんな冗談を」と言うが、私は決して冗談で言っているのではな い。本気でそう思っているのだ。この商売は受注残が唯一の財産であり、全てなのである。今月は契約が上がっても、来月上がる保証は何処にもないのである。 しかし、一概に受注残が多くあればいい、と云うものでもないところに、この業界のミソがある。例えば、今月契約のお客様の棟上げが1年も後ではどうしょう もなく、お客様は待っては下さらない。適当な受注残が必要なのである。適当とは,完工残、即ち売上の計画が立っている現場が6ヶ月~9ヶ月分、着工予定が 確定している現場が3ヶ月~6ヶ月分位だと思っている。今(平成5年10月)当社では、完工残が7ヶ月分、着工残が4.5ヶ月分程ある。当然、今受注して いる現場は、来期の売上に寄与する事になる。仮に、向こう半年間の受注が予定の半分に落ち込んでも、1年位は何とかなるのである。だから私は、1年は潰れ ないと言うのである。経営者は、最悪の事態を常に想定しているものなのだ。因果な事だが経営者とはそんなものなのである。片時も気の休まる時はない。
今期の方針発表会で私は、CS戦略の次に[ゼロベース改革推進]を掲げた。そして、推進室長に井上常務を任命した。本来は、私の最も得意な分野だが、私は まだまだ研修に力を注がなければならないし、FNAも未完成であるし、体感モデルハウスも見届けなければならないので、井上常務にお願いをした。期間は2 年間とし、あらゆる物を全てゼロから考え直し、21世紀に向けた強い企業体質を模索する事を目標とした。所謂、本来のリストラである。井上常務は、私の発 表を受け、本社は移転しない、住宅のメーカーは変えない、これ以外は全て白紙で考えると言った。私は、第一段階は成功したと思った。
バラエティに富んだメンバーが選ばれ、月に2回程度集まり、討議をしているようだ。私は、最初の会議に出席して、主旨説明を行った。先ず基本コンセプトと して、①リストラである、故に考え方はスクラップアンドビルドで行う事、②CSがあくまで中心である、お客様不在では何の意味もない事、③21世紀に向け ての強い企業体質作りである事、④知的生産性向上運動の一貫である事。
次に会議の進め方について、①コンセンサスではなくコンコーダンスで進める事、②このゼロベース推進室は、決議機関でもなければ実行機関でもない。諮問機 関である。だから答申と云う形態をとる事、③一人一人が役割をもって臨む事、④良い悪いではなく、正しい間違っているではなく、合うか合わないかで判断す る事、⑤データを重視する事。
会議の進行状況から察すると、もうそろそろ第1回目の答申がありそうだ。どのような答申がなされるか楽しみにしている。
サンホーム兵庫は、今のところ充分ではないにしても、業績の見通しは一応立っている。私は今がチャンスだと思っている。多少余裕のある時に、一寸先を見込 んだ手を打っておけば、2~3年位は何とかなるものである。そのまた2~3年の間に次の手を打つ。そうすればその先の2~3年は大丈夫である。但し、この サイクルは誰にでもどの企業にも、当てはまるとは限らない。我が社にだけかも知れない。何故なら、業種も違うし、社風や伝統や企業文化も違うし、第一、経 営者自身の哲学が異なるからである。
ゼロベース改革は、5年から10年先を睨んだ戦略である。

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