或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

或る二世経営者の挑戦


第一部 ~君は父親を越えられるか~


第三章 時代は進歩しない変化するだけ

現代はあらゆる情報が氾濫している。特にテレビと云うマスメディアを通じての情報が、多くの人に与える影響は大きいものがある。アフリカの原住民の生活風 景や、アマゾンの奥深い種族の生活様式や、世界各国の少数民族の生活形態等も、ブラウン管を通して我々は知る事が出来る。私は、原住民の生活を見て、決し て遅れているとは思わない。私の妻などは、同情にも似た感覚で見ているようだ。多くの人は、そのような想いで見ているかも知れない。私は、その都度妻に言 う。どちらが幸せか分からないよ、彼らは彼らなりに生きており、毎日をありの儘の自然と暮らしているのだから、お金なんて何の役にも立たないしね。妻は、 そう言われればそうね、と言いながらまた、同じ事を繰り返し言う。
ここ2~3年、特に自然界の動きに異常なものを感じる。普賢岳の爆発、引き続きピナツボ火山の噴火、バングラデッシュ地方の洪水、ミシシッピ川の氾濫、奥 尻島の地震、鹿児島の集中豪雨、相次ぐ航空機事故、等々数え上げれば切りがない。しかし、その根本的原因は解明されていない。地球の温暖化が原因の一つで あると言われているが、何故温暖化するのかは解らない。環境破壊も必要条件かも知れないが、充分条件ではない。
昨年、或る全国紙に堺屋太一氏がほぼ1年に渡り「風と炎と」と云うタイトルで、連載をされた。たまたま当社は、その新聞を購読していた。女子社員に1週間 分をスクラップさせ、私が読んだ後、部長以上に回覧をした。社会の流れとエネルギー問題を、古代の歴史まで溯り、鋭い分析で現代を考察し、未来を考える、 と云う壮大な論文であった。既に本として発刊されているので、今一度読み返そうと思っている。堺屋氏をしても、未来予想については、人間の本来持ってい る、[やさしい情痴]に任さなければならないと、結んでおられた。
世界で最も読まれている日本の小説は、源氏物語だと思っている。ご存知の通り一千年以上も前に紫式部の手によって書かれた、一大叙情詩である。今我々が読 んでも新鮮そのものである。極論すれば、全ての物語の源でありルーツである。一千年後においても、源氏は脈々と生き続けている。ミロのビーナスしかり、モ ナリザの微笑またしかりである。人間の本来持っている情痴とは、そういうものなのだ。
確かに便利な世の中になった。しかしまた便利になっただけである。機械文明においては進歩したかも知れない。だが、科学の世界においても行き詰まっている 事は、万人の認める処である。唯物論で解決出来ない事は幾らでもある。写真を見たり、生年月日を知らされるだけで、人間の性格やその人の近未来の行動を予 言し得るのを、科学の分野で理論的に説明は出来ない。それを霊能の世界だと、笑っては済まされない。
経営の分野においてもそれは当てはまる。この経営は新しいから良いとか、あの経営のやり方は古いからダメだ、などと云う事はあり得ない。組織開発において も、古今東西、集合と分散の繰り返しである。多少その時代において、呼称や方法が異なるだけである。それなのに、この方法が一番正しいとか、これしかない とか、考える頭こそ古ぼけた硬直した頭だと言わざるを得ない。商売の原点は外にある。決して内にはない。内にあるのは倒産の原因である。外とは、勿論、お 客様である。お客様とは、リピートしてくれる人の事であり、口込みで他のお客様を紹介してくれる人の事を言う。企業はその様にして貰える企業にならなけれ ばならない。
時代は進歩しない、変化するだけである。経営は変化に対応する術でもある。変化の過程は歴史から学べると思う。対応する術は、人間から学ぶしかないと思 う。人間に興味を持ち、人間を心から好きになる事が、人間をより理解出来る、早道だと思っている。私にとっては、なかなか難しい遠い道でもある。しかし、 後戻りの出来ない道でもある。

■PDFで読む