或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

或る二世経営者の挑戦


第一部 ~君は父親を越えられるか~


第三章 メーカーに少しだけ言わせて

最初に断っておきたい事がある。私は、決して愚痴を言っているのではない。私共もメーカーもよくなり、お互いが真に共存共栄していく事を心から願っているのである。議論は後日いくらでも承るつもりである。
何年か前、メーカーと協業会社との勉強会があり、その後疑問や要望を書類に書き提出せよ、と言われ、私は、トップス(トヨタで言うなら看板方式にやや近い やり方)について、「考え方はよく解りますが、メーカーの第一の使命は、欲しいものが欲しい時に欲しいだけ供給する事だと思います。実情は、全く違いま す。先ず、それを完成してからでも、トップスは遅くはないと思います」と書いて提出したのである。当時の社長は、大変立腹され、後日聞いた話だが、近畿の 統括部長は困られたそうである。今は大分良くなっているが、物流問題はやっかいな代物である。当時は察する処、物流の現状がどうも経営のトップに報告され ていなかったようだった。専務とお話をする機会があったが、現在はその辺は理解されておられた。
マーケティングを少々噛ったものなら誰でも分かっている事だが、自由主義経済が進んでいくと、業界では寡占化が生じる。自動車の業界を見れば一目瞭然であ る。日産はもう永久にトヨタにはかなわない。プレハブ住宅の業界は歴史は浅いが、いずれ自動車業界と同じ道を辿る事は間違いがない。既にその兆候は表れ始 めている。これだけ変化の激しい時代であるから、予想を超えたスピードで、急速に寡占化が進む恐れがある。自動車業界の衰退原因の一つとして考えられるの は、あまりにもメーカーだけが儲け過ぎ、ディーラーを始め、販売店の利益がなさ過ぎた事にあると思う。新車を販売しても、販売店は雀の涙ほどしか粗利はな い。ディーラーの粗利もたいしたことはない。中古車を売る方が遥かに利益はある。修理や車検で辛うじて経営している。
話を我々の住宅業界に戻そう。先ず、現状の仕様を落とさずに、低価格の住宅の開発を早急にすべきだと思っている。メーカーの経常利益率は10%、それに引 き換え、協業会社の平均経常利益は2.5%である。約4倍になっている。販売から施工、引渡後のアフターケアに至るまで、ない知恵を絞りながら、時には叱 られながら、少々の喜びを見出しし、底辺で汗水流しているのは、他ならぬ我々協業会社である。勿論、メーカーにも我々の知り得ない苦労がある事は確かであ ろう。それらを差し引いても、全くの私見ではあるが、経常利益率だけに関して言えば、2倍位が適当ではないかと思う。我が社を含め、利益率の低い会社は、 経営能力の欠如に起因する問題点があるのは事実であり、認めざるを得ない。それらの事実も踏まえて、敢えて言わせて頂くのであるが、第一線の現場が儲から ないと、いずれは破綻をきたすと思われる。中小企業の経営者、なかんずく、オーナー経営者の最も強いモティベーションは[個人欲]だからである。そんな観 点から、あらゆる商売の原点である[安くて良い物]を創り、供給すべきである。その為には、①今は売れているがピークを迎えようとしている商品、②今は売 れていなくて注目を浴びてはいないが磨けば光る商品、③いくら注ぎ込んでも現在も将来も売れないと思われる商品、等々の調査分析をし、そのデータを基に冷 静な判断をすれば、何か一つくらい改革出来ると思う。
ほんの1週間程前、私は或る中部地区の協業会社を訪れた。私は久しぶりに、一本芯の通った経営者に接する事が出来、大いに刺激を受け、勇気付けられて帰っ てきた。と同時に、私は自分の怠惰さを痛感した。彼は、メーカーに対しても言うべき事ははっきり言い、その代わり自分のやるべき事もしっかりやる。それだ けではなく、地区の同業者の事も自分の企業くらい大切に思い、本当に心から熱心にお付き合いをしておられる。メーカーとも仲間の協業会社とも、オープンな 雰囲気が満ち溢れ、建て前論の存在はなく、迸る熱意と本音を感じた。まさしく、STMの世界がそこにはあった。私には、面倒くさい、こんなこと言っても無 駄だ、他人の事には係わり合いたくない、等と云った気持ちがあり、実は逃げていたようだ。彼は、「ここまで来るには随分時間がかかりましたが、今は、お蔭 様でメーカーとも本当に上手くいっていますよ。中部地区は業績も良くなりましたし、そのうち近畿を追い越すでしょう」と、笑顔で言われた。
実は、記したい事は山ほどあったのだが、彼(先日お伺いした中部地区の協業会社の社長)に会い、私は自分自身の努力の足らなさをひしひしと感じ、その前に やるべき事をやらなければならないと、痛切に思ったのである。信念に基づいた熱意があれば、相手が誰であろうと通じる事を、改めて知らされたのである。私 に欠けていたのは、熱意と勇気だったのである。
私は、早速サンホーム兵庫の設計担当者を4人選んだ。その4人に、以前3回程一緒に仕事をした事があり、住宅についてこだわりを持っている設計士を加え、 6人でプロジェクトチームを編成した。何を目的としたチームかと言うと、サンホーム兵庫としての住宅とは?住まいとは?家とは?を、もう一度原点から思考 し、サンホーム兵庫の家はこれだ、と云う物を創出するためである。我が社に最も欠けていたものは、そこにあると思ったからである。新たな挑戦がまた始まろ うとしている。胸がドキドキしてきた。1年後が楽しみである。

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