或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

或る二世経営者の挑戦


第一部 ~君は父親を越えられるか~


第三章 今時15%もの昇給をするバカ

私は、固い決意でグループの役員会に臨んだ。今年(平成5年)4月の昇給のアップ率15%を、どうしても認めてもらいたかったからである。世間では3%が平均であった。我々には、平成8年には年商百億、と云う目標がある。その目標達成の為には、昇給15%は必要だった。
殆どの役員は呆気にとられていた。社長は「こんな不景気な時に!お前は阿呆か!15%も昇給して年間どのくらい給料があがるんや?何?4,000万!一旦 上げたら下げる事はでけへんのや。解っとんのか?」全て予想通りの言葉だった。私は「月当たり1棟余分に売上すれば、それ位の人件費は吸収出来る。期首の 目標だった、受注残40億も確保出来るし、来期の売上60億、必ずやります。今のこの時期だからこそ上げたいのです。世間が、不況、不況と言っているこの 時を逃す手はないと、逆に思っているのです。7%や8%ではだめなんです。中途半端ですから、やるならこの位やらないと。また、これ位の事が出来ないで百 億売上しても意味がないと思うのです。社員は百億円企業といっても、それが自分達にどのような形として利益になって還元されてくるのかに、興味があるので す。成る程、百億円企業になると云う事はこういう事なのか、という事を身をもって知らせたいのです。社員の意識が百億に向かないと、我々幹部だけではとて も達成できません。これはステップです。ええ、社員の喉元過ぎれば熱さ忘れるも解ってます」
私は、いつか必ずアッと驚くような昇給がしたいと思っていて、その機会を狙っていたのである。
2年程前、ある女子社員を私の部屋に呼んで話をしたことがあった。私は、時間があると、気にかかっている社員と話をすることにしている。その女子社員が 「私の妹は今年高校を卒業したのですが、私より給料もボーナスも妹の方が多いのです。私は一応短大を卒業していますし、2年も前から働いています。仕事は 面白いし、自分の好きな事をやらせて貰って、何も文句はないのですが、もう少し給料の方、何とかなりませんでしょうか?せめて、妹と同じ位は欲しいので す」と言った事が、実は気になっていて、ずっと私の頭から離れなかった。15%の昇給が確定した後、私は朝礼の場で社員に向かって、今年は我が社が日本一 である。何が日本一かと云えば、昇給率が日本一である。今のこの時期に、これだけの昇給をする会社は、日本広しと云えどもうちの会社位である。せめて、1 年位はこの昇給を忘れないで欲しい。喉元過ぎればなんとやらだが、せめて1年位は覚えていて欲しい。経営者にとって清水の舞台から飛び降りるよりも、大変 な決断だったのですから。ところで、今回のこの昇給については、皆さん、小池さんに感謝して下さい、何故なら……と小池女史の妹の話をした。私は2年越し で小池さんとの約束が果たせたと、そっと胸を撫でおろした。ボーナスは各会社で、常識の範囲内で決める事になっていたが、給与は新光グループで昇給パーセ ントが決定され、それに基づいて、各系列会社で昇給を行っていた。給与のベースが新光建設のある、嵯峨郡富山町ベースなので、サンホーム兵庫のある姫路市 とは随分開きがあり、新卒者の採用や中途採用の時にはいつも頭を悩ませていた。特別手当と云う項目を設けたり、一律月当たり10時間の残業手当をつけたり して誤魔化していたのである。しかし、それにも自ずから限度があった。今回、富山町ベースを崩した事により、来年度からはサンホーム兵庫のベースで、昇給 も、それに伴うボーナスも、自由に支給出来るようになったと喜んでいる。
サンホーム兵庫は、まだまだ実力がついていないので、現段階では無理だが、理想としては、4%の経常利益さえあれば、残りは全て社員に分配したいと思って いる。その為には、少なくとも、1人当たりの生産性を、6,000万にはしなくてはならない。今が、5,000万強だから、1,000万上げなければなら ない。受注ベースで云えば、営業マンが1人当たり月0.2棟、年間で2.5棟余分に契約すればいい計算になる。一方、粗利利益率を今より1%だけアップす れば、更に実入りが良くなるし、私も大きな顔をして3,000万位の年収が戴けると思っている。

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