或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

或る二世経営者の挑戦


第一部 ~君は父親を越えられるか~


第三章 FNA戦略

ごあいさつ
 

拝啓 時下益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。また平素は格別のご厚情を賜わり誠に有難うございます。今、時代は予想を越えるスピードで変革し、一層 の混迷をきたしております。しかしながら、弊社サンホーム兵庫は皆様方の温かいご支援に支えられ、順調とは言えないまでも、一定の業績を維持して参りまし た。心から感謝申し上げます。今後とも、皆様方のご期待に添えるよう努力していく所存でございます。
さて私はここ2~3年の間、いつも気に掛かっていたことがございます。口ではお客様本位とか、お客様ご満足第一とか、出入り大工の気持ちでお付き合いをす るとか申し続けて参りました。が、その実はどうであったか、ということです。勿論、その気持ちは嘘ではありません。しかし、その気持ちを一体どういう形で 表現し伝えたかと問われると、明確に答えることが出来ません。成る程PHP誌は送らせて頂いています。でもお客様とのつながりが唯一PHP誌だけでよいの だろうかという疑問が常にあり、心の奥底に何かが引っ掛かっていて、お客様に対し申し訳ない気持ちで一杯でした。
私共では、新光建設(株)時代から新光ロイヤル住宅(株)を経て、現在の(株)サンホーム兵庫に至る迄の間に、約4,000棟の住宅を建てさせて頂いてお ります。正直に申し上げて、殆どの原因は私共の至らなさからでしょうが、充分なご満足をお届けしていないお客様もいらっしゃいます。誠に残念な事です。そ こで、平成4年4月にCS(お客様満足)推進本部を設置し、私自ら本部部長となり様々な検討を重ねて参りました。その一環として8月に各年代層、各部署か ら成るプロジェクトチームを編成し、お引渡しさせて頂いたお客様に焦点を絞り、本当にこのままでいいのか、何か具体的な形で皆様にご案内させて頂ける方法 はないか、と議論を交わしました。
その結果、この度私共は約4,000名のお客様の中から、特に選ばせて頂いたお客様と有効的な情報交換をし、ご満足をお届けする為に、各家庭にファクシミ リを設置させて頂きファクシミリを通じて[ふれ愛]の輪を拡げていければと考えております。私共からは月1回以上できるだけ価値ある情報、例えば、四季 折々のお住まいのお手入れ方法、あらゆるご相談、ギャラリーのご案内、お得なショッピング情報、etc……をご提供させて頂きたく思っております。また、 皆様からはご要望は勿論、どんな些細な情報でも結構ですからご発信頂けたら幸いです。勿論、最優先にご対処させて頂きます。そしてサンホームファミリーと して、生涯お付き合い頂ければ大変嬉しく思います。
また近年、一般家庭でのファクシミリの設置が著しく増加しております。この機会に各ご家庭同士でも情報交換や近況報告など、新たな[ふれ愛]の輪を拡げる 一手段として、このファクシミリを利用して頂ければと存じます。情報化社会と言われて久しい時代になっておりますが、ファクシミリを通じ、弊社と皆様方と の絆が少しでも固くなり、ご恩返しが出来ればと考えております。

どうか私共の趣旨をご理解の上、ご賛同頂きたくお願い申し上げます。

敬具

各 位

株式会社サンホーム兵庫
代表取締役 北見 俊介


上記の挨拶文はFNA戦略を最初に展開する際に、送付した案内状の中に同封したものである。
FNAのFは、ファクシミリのFとフレンドシップのFであり、NはネットワークのNであり、AはアライアンスのAで意味は、共感とか同盟的結合などと云う 意味である。ファクシミリを通じて、友情の輪を共感的結合にまで高めていこうと云う趣旨のもので、FNAと名付けた。目的はリサイクル受注と紹介受注であ る。私共でお建て頂いているお客様が、今度何年か後に建て直される時、再度私共にご用命を下さる事を最大の狙いにしている。FNAは気が遠くなるような長 期戦略なのである。普段何ひとつ利益を供与しないで、自分達の都合のみ主張しておいて、いざ建替え時にはご注文を戴きたいと云うのは余りに虫が良すぎると 思う。人間は、お客様に限らず、ギブ・ギブ・ギブ&テイクくらいで、丁度良い加減だと思っている。
私のような者でも、フェイスツウフェイスでお客様と直接面談をする方が、より一層温かいお付き合いが深まる事くらい解っている。過去に、様々なシステムを 考え試みたが、全てうまくいかなかった。人間は、考えられる理由を挙げ訪問出来ない言い訳をするが、機械は指示した通り作業を完了すると云う結論に達した のである。本社に、コンピューターを内蔵したセンターマシンを設置し、その機械に指示を送れば、こちらが意図する行為を何ひとつ嫌な顔をせずしてくれる。
昨年(平成4年)の8月に各部署から1人ずつ選び、私を含め9人のメンバーによるプロジェクトチームを編成した。先ず、アトランダムにお客様を抽出し、 ファクシミリを使った情報システムについて質問形式によるアンケートをとり、本当に効果があるか意識調査を行った。その結果を踏まえ、社員に関心を持たす 為に、社内PR誌を作り、配布した。ついこの間、東京まで出張し、ストレスマネジメントと云う、組織理論を習ったのが役に立った。その理論によると、何か 新しいものを導入する場合、全体の15%の者は積極的に賛同し、20%の者は消極的に賛同するのだそうである。また、15%の者は反対を唱え、20%の者 は消極的に反対し、残りの30%の者は、態勢を眺めているのだそうだ。巧く事を運ぶコツは、消極的に賛同するグループを最初に取り込み、次に様子を観てい るグループを引き込むのだそうだ。その内、消極的に反対しているグループもついてくるらしい。反対するグループは、いくら説得しても決して賛同はしないか ら、放っておけばいいのだそうだ。そう言えば、何をしても反対する者がいる、と思い当たる節があったと実感した。
下準備が整い、いざお客様にアクションを起こす段になり、信じられない事が判明した。正確なお客様の名簿がないのである。メーカーから取り寄せた名簿で、 ダイレクトメールを送付したが、30%くらい返信されてきた。私達は次の手段を考えた。PHP誌を送付している名簿は正確なはずである。その名簿をPHP 社から取り寄せ、再度DMを送った。そのDMの中には、①ごあいさつ文、②募集要項、③申し込み書、④ファクシミリのカタログ、⑤申し込みから設置までの 手順書を同封した。これらの作業と平行して、営業マンを中心に説明会を開催し、社内での趣旨の徹底を計りながら、FNA会員の入会募集を奨励した。当初の 会員数の目標は700だった。我々メンバーも1月の寒い日に、主な団地を中心に、2人1組で600戸程訪問した。私も実際訪問したが、苦情を言ってくれる お客様はまだしも、我が社に期待感があり救われた気分になったが、無視されたのは最も寂しい気持ちになった。今までのツケを払わされているようで辛かっ た。私は、何度も挫けそうになった。それでも気を取り直し、山に植林をするつもりで、その戦略を敢行した。植えた木が、大木となるのをひたすら信じるしか なかった。
結果としては、現在350名程の会員になっている。その会員の方を、地域別、建築年代別、ご家族の趣味別に登録し、今年の5月から、毎月28日を送信日と 決め、月1回[今が旬]と云う社員で作った情報誌を、勿論ファクシミリで送信している。11月にはゴルフコンペを開催する予定にしている。お客様からの投 稿もぼちぼち来ているようだ。最初の段階で心配したような苦情はほとんどない。私達を喜ばすような情報は今のところないが、一応完成の域になりつつある。 FNA戦略を遂行していく上で、派生的に出てきた事柄だが、工事中にファクシミリを使って連絡を取り合うシステムが構築された。当然、お引渡時にFNA会 員になってもらうようにしている。当面の目標は、1,000名に限りなく近づけたいと思っている。1,000名のお客様が、仮に25年後に建替えされると すると、計算上だが年間40棟の契約が上がる事になる。夢の様な話だが、夢がなければ現実はないと思っている。飛行機だって、人間が空を飛ぶ夢が現実と なった産物である。要は、どれくらいのギブを続けられるかである。

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