或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

或る二世経営者の挑戦


第一部 ~君は父親を越えられるか~


第三章 体感モデルハウス

風の強い日だった。私は設計課長の山下君と設計主任の杉村女史を連れて、下関へ行った。何をする為かと云うと、先日メーカーが主催した勉強会の席上で、下 関の協業会社が事例発表をした、体感モデルハウスを見学する為である。私はこの事例発表を聞いて、ピンと来るものがあった。百聞は一見にしかず。直ぐさま 連絡をして、見学させて戴く運びになった。サンホーム兵庫に設計者は沢山いるが、連れて行く人間はこの2人以外にないと思った。
モデルハウスを約1時間ほど見せて頂き、その後本社にお邪魔し、社長を始め幹部の方に色々とお話をお伺いした。帰りの新幹線の中で、私は2人に何か参考に なった事があるか?と云う質問をした。2人は普通の展示場と余り変わりませんね、と言った。私もそう思ったが、それぞれの会社のやり方があるので、それは それでいいのではないかと、答えた。私は2人に大いに参考になったと、言った。「先ず、私はあの様なモデルハウスを創る気はない。普段は従来の展示場とし て使い、宿泊のお客様がある時だけ、体感展示場として使用する、などと云う運営はしないつもりだ。宿泊のない時は閉めておけば良いと思っている。二束の草 鞋は絶対履かないつもりだ。宿泊してもらい、実際にいろんな体感をして貰い、楽しんで貰い、契約を頂戴するのが目的だ。あくまで、契約までのお客様を対象 に宿泊してもらう。社長を始め幹部の人達がおっしゃっていただろう。宿泊すれば、お客様はおたくで契約しなければならない、と云う気持ちになり、現実はな かなか泊まってくれない。だから、この1年で9組しか泊まっていないと。それも、工事中のお客様とか、近所の自治会の役員さんが殆どだと。私は多分営業が その様な報告を、上の者にしたのだと思う。それを上の者が、変に納得した結果だと思う。しかし私は、敢えて宿泊者を契約までのお客様か、契約前後のお客様 に絞り込み、体感展示場を運営していこうと思っている。その為に、これは今閃いたのだが、宿泊されるお客様からお金を戴こうと思う。1人当たり千円でもい くらでもいいと思うが、とにかく料金を取る事にしようと思う。多少なりとも料金を取れば、お客様の気持ちの負担も和らげると思うのだが、どう思うかね?そ の代わり、夜の食事の材料だけでいいから、我が社の方で提供しようと思う。お客様には、モデルハウスで実際料理をして戴いて、食器洗い機を使って貰うのも 良いと思う。私は大変参考になった。あの会社がしている反対の事をすれば、きっと成功すると思ったね。大事なのはコンセプトだ。最初のコンセプトをしっか りしておかないと、いろんな雑音に悩まされ、右往左往する結果になってしまうからね」
私は、体感モデルハウスを創るのなら赤穂市しかないと思っていた。それから1ヶ月もしないうちに、赤穂市に格好の土地が見つかり、即購入した。シチュエー ションもばっちりの場所だった。山下君と杉村女史を連れて敷地調査に行った。そして2人に、①バーベキューが出来る事、②星が見える家、と云う二つのテー マを与え、設計コンペをさせた。平行して、体感展示場の運営に関するプロジェクトチームを営業のマネージャークラス10人で編成した。杉村女史が創ったプ ランが断然良かった。プロジェクトのメンバーも全員がそのプランに賛同した。そして杉村女史は見事にモデルハウスを完成させた。私は、杉村女史の上司であ る田丸課長を現場管理者につけた。田丸課長も協力してくれ、私のイメージ通りのモデルハウスが誕生した。杉村女史の家族も大変喜んでくれ、娘が設計したモ デルハウスに是非泊りたいと言われ、オープン前に家族一家で宿泊された。また、前述したと思うが、この11月に杉村女史は社内恋愛の末、結婚する事になっ ている。結婚後も仕事は旧姓で続ける。仲人は私がさせて戴く。
体感展示場「あめにてぃ倶楽部」~我が家へようこそ~が、このモデルハウスのネーミングである。プロジェクトチームもこの体感展示場のコンセプトを良く理 解し、大いに活用してくれている。目標宿泊数は、年間60組にしていたが、それは軽く突破しそうである。7月の末にオープンし、8月から実動したのだが、 8月は20組、9月は9組のお客様にご利用頂き、10月も7組、11月は5組の予約が入っている。成約にもどんどん繋がっているようである。今のところ一 応成功だったと言える。
先日、大阪の協業会社の方が、社長以下10名程、この体感展示場を見学に来られた。暇だったので私がご案内をした。その会社は年商が150億、利益が10 億と云う、全国でも最大規模の協業会社である。財務体質に関しては、全国一の企業であると私は思っている。私共の会社にとっては、この体感展示場は合う戦 略かもしれないが、お見えになったこの大阪の会社には合わないと感じた。企業風土も違うし、伝統も違う。第一こんなまどろこしい戦略を採らなくても、他に いくらでも方法がその会社にはあると思った。見学に来られた方々の真剣さが、我々が下関へ行った時とは違っていた。当社にとってはこれしかないが、その会 社は、体感モデルハウスでもやってみるか、と云うニュアンスが、お受けした質問内容で感じられた。良い、悪い、を判断基準においておられるようだった。合 うか、合わないかで、判断されるようお勧めしようかと思ったが、おこがましいと思い直し遠慮した。
私は、「あめにてぃ倶楽部」が大好きである。どれくらい好きかといえば、この建物に住みたいと思うくらい好きである。

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