或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

或る二世経営者の挑戦


第一部 ~君は父親を越えられるか~


第二章 バブルって何?

バブルの崩壊後、2年以上も不況が続いている。追い討ちするかの様に円高が到来し、自然界もおかしくなり、今年の夏は冷夏に見舞われた。政府は、ここ1年 の間に約30兆円の景気対策を打ったが、殆ど効き目はない。公定歩合も最低の1.75%に下げた。だが景気の底さえもまだ分からない状態である。今まで、 日本経済を支えてきた自動車と家電が特に酷いようだ。銀行を始め証券会社を含む金融業界で、一体幾らの不良資産があるのかさえも掴めていない。お先真っ暗 である。
私見だが、①として政府が打った、公定歩合の引き下げも踏まえて、景気対策が全てタイミングが遅いと思う。②として、延長線上の考え方しか出来ない官僚の 頭の堅さに原因がある。ケインズ理論が全てだと思っている。③として、企業自身にも大いに問題があると思う。サラリーマン経営者は長期展望に立った施策 を、本気でやる気がない様に思われる。何故なら、この1年、過去1年の実績で経営者を評価する部分があまりに大きいからである。そういう面では気の毒であ る。解っているけど、長期的な事は後回しにして、今期の事柄を優先せざるを得ないのが、現実だと思う。
それでは、お前ならどうするのだ、と問われても、無責任な事を言うようだが、判らない、と答えるしかない。唯、物の見方をまるっきり変える必要があるので はないかと思う。失業率は多少増えるかも知れないが、何も一切手を打たないとか、規制緩和などと云う生易しいものではなくて、取っ払ってしまう、というこ とである。住宅に関連して申し上げれば、流通チャネルを半分にすれば、3割から4割安くなると思う。木造住宅なら、必ず5割以上のコストが下がると思う。 内地材でも外材でも建築主に届くのに、どれ位の中間搾取が行われているか、考えて頂ければ理解できるはずである。但し、犠牲者が出るのを考慮しなくての話 であるが。直ぐに出来るのは、規制緩和である。土地を分筆する場合、それが自分の所有の土地であっても、隣接する人の同意がいるのだが、これは全く意味の ない法律である。どれだけのトラブルが発生しているか、よく考えて欲しい。法社会学や法哲学を少しは勉強して欲しいと思う。
私は、バブルの時どうしても納得がいかない事があった。新しいものより、古いものの方が高い、と云う現象だった。衣服でも、車でもそうだと思うが、古着よ り新しい服の方が高いだろうし、中古車より新車の方が高いのは当たり前の事である。その当たり前の事が、当時は当たり前ではなかった。例えば、住宅公団が マンションを分譲した。新築マンションは国土法により分譲価格の上限が決められているので、その価格より高く売る事が出来ない。でも一度所有権を取得する と、その後は幾ら高く売買しても差し支えない。つまり新築マンションより、中古マンションの方が高いと云う現象が起こりうるのである。だから、新築マン ションの申し込みの倍率が、驚異的な数字であった。何故なら、当たると約30%~50%高い価格で売れていった。宝くじを買うより確立が良い、といって買 い漁ったのである。買われていったマンションには、誰も住んではいない。住むためにマンションを買うものはごく僅かだった。
これと同じようなことが、土地や美術品の世界にも起こった。その土地が欲しい訳ではなかったし、ルノアールの絵画を一生自分の手許に置いておきたい訳では なかったのである。株は更に酷かった。私は、株とは、お金を出さないと買えないものだと思っていた。株で、何億も損をすると云う事が分からなかった。信用 買いと云うシステムを知らなかった。私の回りは誘惑だらけだった。住宅には土地や建物はつきものだし、ギャラリーには美術品はついて回るものだし、銀行は 幾らでも金を使えと言っていた。しかし、私には、どうしても新しいものより古いものの方が高い、と云う現象を認める事が出来なかったのである。
私の従兄弟に、建築資材の総合卸の会社を経営しているのがいる。他人は消極的だとか、面白味がないとか、細かい奴やとか、彼を批判しているが、私は、守り の天才だと思っている。その従兄弟は、父親が拡げるだけ拡げた風呂敷きを、見事に畳んでしまった。私には出来ない芸当である。企業経営において、本当は攻 めより守りの方が難しいと思う。攻撃は最大の防御なり、は間違っていると思う。成る程、古今東西、籠城をして勝った戦はない。しかし籠城と守りの経営とは 少し違う。守りの経営にも、積極的な守りと云うものがある。彼は、その積極的な守備の名手である。野球でいうなら、巨人の川相を見よ。西武の辻は守りで1 億円プレイヤーだ。2人とも積極的な守りをするではないか。当然の如く、従兄弟にもバブルは、春のそよ風の様なものだった。彼の会社は2年前に創立40周 年を迎えた。新光建設は28年目であり、我が社はまだ15年目である。どちらも二世経営者である。年齢も同じである。

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