或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

或る二世経営者の挑戦


第一部 ~君は父親を越えられるか~


第二章 胃潰瘍は友達

今から7~8年前になると思う。どうも胃の調子が良くないし、1日に3、4回痛みが走る。辛抱できないほどの痛みではないが、薬局の胃薬では誤魔化しが効 かなくなった。35歳の時、友達と人間ドックへ入ったが、その時は何処も悪くなかった。私は腹を決め、新光ロイヤル住宅の近くの病院へ行った。そこで初め て内覗鏡、所謂胃カメラというものを飲んだ。結果はかなり重症の胃潰瘍だった。食後の飲み薬と、毎日注射を打ちに行かなければならなかった。2ヶ月程で 治った。しかし、2~3年毎に顔を見せる。今現在も投薬中である。今月の半ばにまた胃カメラを飲む予定になっている。私が胃潰瘍になる様な繊細な神経など 持ち合わせてはいない事は、自他共に認めている。それが証拠に会社を経営していく上で、苦悩の為に眠られなかったことなど一度もないのである。胃潰瘍は、 体質としか言いようがない。厄介な体質である。この際お友達だと思って、仲良く付き合っていく他はない。
症状としては、個人差はあると思うが、私の場合は、食後30分もしないうちに、胃がキリキリ痛み出す。空腹感はあるのだが、その痛みが怖くて食事が楽しく ない。ゲップが出やすくなり、少し食べ過ぎると戻したくなる。大便には特に注意しなければならない。便の色が黒ずんでくると、胃の中で出血が起こっている と思えば、先ず間違いがない。私は、毎回チェックしている。ここのところ非常に良い色である。でも、素人判断だけは止めた方が賢明である。
今年の(平成5年)6月の事だった。その日私は京都へ歌舞伎を観に行く予定だった。しかし、歌舞伎どころではなくなってしまった。岡山の協業会社の、正式 には副社長だが、合弁前は社長だった人が亡くなられたのである。私が岡山に営業所を作って、所長として単身赴任をしていた時に、大変お世話になったし、そ の後も何かと付き合いがあり、私の事を「俊チャン俊チャン」と愛称で呼んでくれる仲だった。たくさん儲けて世界一周旅行を、それもファーストクラスで一緒 にしよう、と言っていたのである。毎年、自分の畑で獲れた水密桃を送ってくれていた。原因は胃癌だった。奥様の話によると、手術をしようにも手の施しよう がなかったのだそうだ。54歳の生涯だった。他人事ではなかった。彼の警告だと思い、私は葬式の2日後にあわてて自宅の近くの病院へ行った。2~3週間程 前からまたお友達である胃潰瘍の症状を感じ始めていたのである。私の胃は、少し変形していて胃カメラを飲むのが普通の人と比べて、大層苦しいのである。涙 を流しながら、透視が終わった。やはり、潰瘍が出来ていた。潰瘍でよかったとひと安心するやら、またかと思うやら、複雑な気持ちだった。もうそろそろ煙草 を止めなければいけないと思っている。我が家では禁煙している事になっている。妻が私の身体のことを本気で心配するので、私もついつい禁煙すると宣言して しまった関係上、煙草を吸う訳にはいかないのである。これが最後、今度が最後の一箱、と思いながらまた買ってしまう。意志は結構強い方なのだが、この一本 で煙草を吸うのが一生のうち最後かと思うと、寂しくて仕方がないのである。悪い女だと分かっているのに、ついつい深入りをしてしまう、と云う心境?なの だ。
今の胃潰瘍が一段落したら、毎年春にはドックに入ろうと、真剣に考えている。経営者の健康管理は重要な問題である。特に私の様な代わりのきかない経営者に とっては、最重要課題である。健康は目的ではないが、基礎ベースである。そう若くない年齢になった今は、本当に意識をしなければいけないと思っている。寂 しいけれど、煙草に手切金を払う時期に来ている。
また最近歯を抜いた。それも上の奥歯を左右二本ずつ抜いた。入れ歯になるらしい。しゃべり辛くて仕方がない。原因は歯槽膿漏だそうだ。眼鏡は、本を読むと き、書類に目を通すときには、手離せなくなっている。所謂老眼と云う奴だ。髪の毛も実は、ヘアーマニュキアで間に合わなくなり、染めている。ほんの5~6 年前までは考えられなかった事である。少年老い易く、学成り難し、とはよくいったものである。

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