或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

或る二世経営者の挑戦


第一部 ~君は父親を越えられるか~


第二章 新入社員がやってきた!

今年で3年目になる。こんな立派な入社式を執り行うのは。私の感慨はひとしおだった。新光建設グループの入社式が、新光建設の2階の大会議室で今整然と進行している。社長の訓話から始まり、辞令書の交付、従業員代表の歓迎の言葉、新入社員誓いの言葉。
事業部制を導入した際に、井上常務が人事を担当するようになってから、毎年新光建設グループで17~8人の新入社員が、入社してくる様になった。それまで は、私が片手間に採用を行っていたが、なかなか思うような成果が上がらず、せいぜい2~3人取れたら良い方だった。井上常務は、相当の苦労と忍耐を強いら れたと思うが、今では欲しいだけの人数は確保出来るようになった。こんな名もない小さな企業にである。大変有り難い事だと思っている。短期間にひとつの事 をやり遂げる能力を井上常務は持っている。私には無い能力である。
平成元年から4年頃までは、完全に売手市場だった。資本力にまかせて、大企業はこぞって新卒者のために媚をうっていた。リゾートマンションよりも素晴らし い独身寮を提供し、スイートルーム張りの個室を与え、解禁日には海外旅行にまで連れていった企業もあった。今は、リストラと云う錦の御旗のもとに、本来は 経営者自らが負わなければならない責任を、今日まで大いに貢献してきた、中高年の管理職にその責を転嫁している。
当社も、新入社員の車の方が先輩の車より良いとか、ノルマがないとか,休日はしっかり休むとか、些細な批判はあった。多少の優遇はしたかも知れないが、そ れも常識の範囲内だったと思っている。目くじらを立てる程ではなかった様に思う。今では、先輩社員からはそんな不満は私の耳には入ってこない。
これは全てに当てはまるとは思わないが、総じて、ここ5年程の間に入社してきた者は「未だ知識も経験もないので、足を引っ張っていると思います。今後は知 識や経験を積んで、頑張りたいと思います」と云う考え方がある様に思う。逆に、知識や経験があれば仕事が出来るのか?と、問いたい。当社でも10年以上勤 務しているものも沢山いる。(平成5年9月現在で30人いる)その社員達は知識や経験において劣るものはなにひとつない。ならば仕事ができるか、と云えば 一概にそうではない。知識や経験を盾に甘えているとしか思えない。一種の逃避である。勿論、知識や経験は必要欠くべからざるものであることは間違いがな い。しかしながら、根底に熱意と創造力がなければならない。
熱意とは少し古い言葉かも知れないが、あらゆる商売の原点は、そこから出発していると思う。お客様に対する熱意、上司や自分の属するチームに対する愛着、 同僚や部下を思う気持ち、家族に対する愛情、そういうものを常にめらめらと燃えさせておく事が肝要である。人が生きていく上でもまた同じである。創造力が ない者は工夫がない。惰性で仕事をしている様なものだ。ついでに人生を送っているのと同じである。創造力を感性とも云う。簡単に一朝一夕に身に付くもので ないと、御指摘もあろうが、かといって長く生きていても身に付くものでもない。唯単に歳だけ重ねている人も沢山見受ける。感性を磨くために必要なことは、 知識と経験プラス真剣な問題意識である。真剣な問題意識のないところに、なにひとつ感性は閃かず、創造力は湧いてこない。その大事な出発点は、先ずあらゆ る事をとりあえず受け入れることから始めなければならない.故松下幸之助氏は、それを素直な心、と説いている。私などは、氏の足元にも、爪の垢にも及ばな いが、45歳にしてほんの少しだが何かが解った様な気持である。

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