或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

或る二世経営者の挑戦


第一部 ~君は父親を越えられるか~


第二章 生意気な女達

根本女史の場合
「この新光ロイヤル住宅にはクリエイティブな仕事がないでしょう。部材はメーカー支給だし、間取りだっていろいろ制約があるでしょう。わたしこのままだと 自分の才能が生かせないと思うんです。ええ、それでね、今度行く会社はね、店舗デザインやリゾート関係の会社なんですが。いえ、その会社が請け負って工事 はしないんですが、ソフトというか、インテリアというか、デザインなどのノウハウを売る会社なんです。自分が求めていた仕事がそこにあると思いましてね。 それで、行く事にしたんです。どうも短い間でしたが、ありがとうございました」
「僕が知る限りにおいて、そんな会社はこの地域にはないと思うよ。東京とか大阪ならあるかもしれないが、この辺にはね。二級建築士の資格も去年取って、 やっと今から本格的に仕事が面白くなってくると思うよ。この初出にも表彰されたばかりじゃないか。そうか、もう決めているんだったら仕方がないなあ。じゃ その会社へ行っても頑張ってくれ」
根本女史は、そのクリエイティブな会社を1週間ほどで辞め、慌てて新光ロイヤル住宅の元の上司に泣きつき、その元上司の紹介で同じプレハブ住宅に現在も勤 めているそうだ。これは、余談だが、相前後して新光ロイヤル住宅を辞めて行った男子社員と結婚したそうである。更に、付け加えるならば、その結婚式の仲人 は、男子社員の元上司がしたのである。更に付け加えると、その男子社員は今は新光ロイヤル住宅に復帰している。世間と云うものが少しは分かったかもしれな いと、思っているのは私だけであろうか?

福田女史の場合
「長い間お世話になりました。今度来月から設計事務所に行く事になりました。ありがとうございました。小さい頃からの夢がやっとかないました。いつかこの 辺に私が設計した建物を建てたいと思います。一生残るような、素敵な建築物を。副社長も頑張って下さいね」
「今度君が行くという設計事務所僕もよく知っているが、君が考えているような処ではないと思うよ。二級建築士を取ったからといって、直ぐ設計なんかさせて くれないと思うし、せいぜい、お役所回りか、トレース位だと思うよ。下手をすれば、お茶汲みか、電話番かも知れないよ。君は、仕事に対しても前向きだし、 将来楽しみにしていたのに、残念だなあ。まあ、一度他人のめしを喰うのも悪くないかもね。気に入らなかったら何時でも帰ってくればいいよ。大歓迎だから」
私は、入社の時も面接するが、退職する時も面接を行っている。
福田女史は半年もしない内に、その長年の夢がかなった設計事務所を辞め、新たに木質系の住宅メーカーの試験を受け、そこで働いているようだ。
他にも2人の女史が辞めていった。理由は多少違うが、五十歩百歩だ。それぞれに、お勉強は良く出来、地元では有数の進学校から県立の短期大学へ行き、生活 環境学と云うかなりの専門的な知識を得、当社に入社してきたのだが、二級建築士を取るや否や、もっともな理由を言い辞めていった。我が社は、お嬢様の養成 学校ではない、と声を大にして言いたかった。しかし、救いはある。その辞めていった女史達の先輩で、草分け的な存在である杉村女史は、新光ロイヤル住宅の 女性としての業務の在り方を、実践で示してくれている。最近完成した、体感モデルハウスは、彼女が設計からインテリアは勿論、殆ど一人で見事に完成させ た。今度、11月に社内恋愛の末、結婚する。私が仲人をさせて戴く事になっている。喜んでお引受をした。但し、結婚後も当社で働く事を条件にであるが。仕 事は旧姓ですればいい、家庭に戻ったら旦那の名字になればいい、などと勝手なことを私はお願いをした。彼女もその気だったらしく、快く同意してくれた。
その他にも大変優秀な女性が4人程当社にはいる。長く勤めてその中で自分の人生を見付けてくれたらいいのにと願っている。昨今職場での女性の扱いについ て、いろいろと取り沙汰されているが、基本的には、取り沙汰する事自体がおかしいと思う。普通で良いのだと思っている。自然が良いのだ。少なくとも私の中 では男女を区別した覚えはない。考えてみれば、男も女も沢山の人が辞めていったものだ。それぞれの立場での活躍を祈っている。
辞めていった人が自分の家を建てるときに当社に相談をして建ててくれるのや、自分の身内や友人をお客様として紹介してくれるのは大変嬉しいものだ。また辞 めていった社員が、当社と業務上で係わりあいながら、仕事をしている様子を見るのも嬉しいものだ。

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