或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

或る二世経営者の挑戦


第一部 ~君は父親を越えられるか~


第一章 事業部制の導入

私は、自分の愚かさを悔やんだ。しかし、いつまでも悔やんでばかりはいられない。病魔は確実に新光ロイヤル住宅を犯しつつある。利益は他にあるが、病原菌 は内にある、とはよく言ったものである。良くなるのには時間がかかるが、悪くなるのはあっと云う間である。私は考えた。久しぶりに考え続けた。いろんな書 物も読んでみた。
私は、二人の常務を部屋に呼んだ。彼らも階層別の1泊2日の話し合いに出席していたので、現状をよく理解していた。私はこれを 打破するのには、大幅な組織 改革しかない、と言って事業部制を提案した。新光ロイヤル住宅は、親会社である新光建設の組織形態を基本的には踏襲している。つまり、二部制を今日も取っ ている。大きくは管理部と事業部に分かれている。管理部は、総務全般、庶務、経理、人事を統括している。事業部は、営業、工事、設計、アフターサービスを 包括したものになっている。
当時は、粟倉常務が、アパートとリフォームを担当していて、井上常務が、戸建を担当していた。私は、全般と管理部を 見ていた。客観的な判断をするならば、 粟倉常務が管理部を担当し、井上常務が事業部を担当するのが相応しかった。しかし、敢えてその逆の決断をし、二人に伝えた。事業部を担当する方が部下も多 いいし、華々しい部門である事は間違いなかった。おそらく、二人とも事業部を担当したかったと思うが、私は井上常務の方が無理を言い易かった。井上常務は 管理部を快く引き受けてくれた。
井上常務には、資金面の事を、特に回収に力を入れてくれるよう、依頼した。人事面では、大学卒業者の定期採用を お願いした。5年計画で、社員が100名を 超す頃には、半分近くが新卒者になるよう努力して欲しいと言った。その当時売掛金が月商の2ヶ月位あったのが、現在では(平成5年)0.4ヶ月になってい る。それに平行して借入金も減少し、0.5ヶ月になっている。どちらもゼロになる日は近いと信じている。一方定期採用の方も順調に推移している。目標の 50%には達していないが、40%を占めている。こちらが欲しいだけ確保できるようになった。社内には新しい規範が出来つつある。今は、21世紀に向け た、強い会社作りを目的に、ゼロベース改革を推進する、一大プロジェクトを組み、その推進室長を井上常務にお願いしている。
粟倉常務には事業面 全てを担当してくれるよう伝えた。少数にすれば精鋭になる、と言い、事業面を細分化し、事業部制を導入した。先ず、戸建を姫路事業部と 加古川事業部と、明石事業部の三つに分けた。後に、加古川と明石を合併させ、第二事業部とし、姫路は第一事業部とした。業績の比較的良かった特販事業部は そのまま残し、引き続きアパートとリフォームを担当させた。後に、特販は戸建と逆に、アパート部門を担当するサンライフ事業部と、リフォーム事業部に分け た。又一方では、アフターサービスの充実を計るため、専属のサービスマンを3人配置し、SP課として私の直轄下においた。今までは、営業、工事、設計と職 種別組織にしていたのを一遍に企業的組織にしてしまった。更にその事業部内で営業、工事、設計に分け、営業もチーム別に細かく分けさせた。それぞれの立場 で、責任の所在を明確にし、出来るだけタイムリーな手が打てるように計った。
当然混乱はあった。それは、半年から一年近く続いた。以前の組織の 方が良かった、仕事が上手くいっていた、面白くない、色々あった。私は、様々な不満は覚 悟の上だったので耳をかさず、我慢強くじっと耐えた。私にはこの事業部制に自信があった。成功するまでやる事が成功の秘訣だ、と自分自身に言い聞かせなが ら時を待った。その時、あるセミナーで教えて貰った、ヘリコプター人間、つまり言い換えれば、着眼大局、着手小局を文字通り実践した。最近学んだ、ストレ スマネジメントをもう少し早く知っていれば、もっと気楽に科学的に耐えられ、行動できたのかもしれない。
一年も経過すると、誰もそんなに不満は 言わなくなった。私は手ごたえを感じ始めていた。今は、事業部間で健全な競争をしている。横櫛も適当に入り、私が目 論んだ事業部制はほぼ完成の域にある。当初から5年が過ぎようとしている。そろそろ、組織開発が必要になってきたと思っている。それにしても、粟倉常務は 粘り強いと感心している。私には絶対ないものを持っている。一般常識のない、学校のお勉強も余り良くない部下達を、時には叱り、時にはおだてながら、ここ までやってきた忍耐力には、ほとほと頭の下がる思いと、感謝の気持ちで一杯である。何年か前に胃が破れ入院し手術をした事があった。色々と口には言えない 苦労があったのだと思う。しかし、私に一度も愚痴をこぼさなかった。大事にしなければならないと、心から思っている。

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