或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

或る二世経営者の挑戦


第三部 ~すべてはお客様のために~


第二章 当世学生気質

私が新光建設の専務から新光ロイヤル住宅の代表取締役副社長として、経営を任されるようになってから20数年が経過しようとしている。赴任し1年くらいが 経ち少々落ち着きかけたので、「我が社も大学卒を中心とした人材の確保をしなければ」ということになり、リクルートに大金を支払い募集を行った。会社説明 会を出来るだけ学生が来やすい場所を設定し、駅前の地場産ビルやホテルを利用して開催した。開催時刻になっても5~6人しか集まらなかったこともあり、せ いぜい多くても15人くらいだった。それでも私は一生懸命当社の将来性や自分自身の考え方を訴え、何とか入社をしてもらえるように懇願にも似た想いで説い た。4~5人内定を出し、2人くらい採用できれば上出来だった。私は当社に魅力がないのだから仕方がないと、自分自身に言い聞かせることで納得させたもの である。
3年間位は採用の全てを私が執り行っていたが、あまりに時間とエネルギーを要するので井上常務に任せ、ポイントポイントで私が関わるようにした。彼は独特 の『恐怖のマネジメント』を行使し、資金もふんだんに使ったが人数だけは確保できるようになった。私は会社説明会で1時間ほど話すのと、内定が決まった学 生の自宅に菓子折りを持参して是非当社に入社して頂くように、と訪問するのが役割だった。当時は大企業においても、超高級社員寮を提供したり、内定者を海 外旅行に連れて行ったりしていた。当社も1泊2日くらいの国内旅行に、内定者を招待していた。今考えれば馬鹿なことを、世の中こぞって行っていたものであ る。そのような時期に入社した者が今現在40歳前後になり、多くの企業で中心的役割を担わなくてはならない地位にあるのだから、企業運営がうまくいかない もの当然と言えば当然かもしれない。
ここ5年間の当社の採用状況についてお話をすると、先ず『リクナビ』とかでネット上に募集広告をする。その費用は大体150万くらいである。学生からのオ ファーと言うか登録が約500名ほどあり、その中から1回の会社説明会に100名程度の学生が参加する。2回行うから200名の学生が当社ネットワーク企 業と最初の関わりが出来ることになる。そのうち最終的に160名くらい一次面接を行う。その面接担当者は幹部役員を中心に、適当にリーダークラスも入れて 3人で行う。約50人程が一次面接をクリアして第二次面接へと進むことになる。二次面接は私が1人ずつ約1時間程かけてする。25人ほど採用するが、4月 1日の入社式にはなぜか20人になっている。
会社説明会は最初にここ5年くらいの間に入社して、まあまあ仕事が出来だしたものを7~8人選んで、自分の仕事のこと、上司とのこと、会社の雰囲気、嬉し かったこと、辛かったこと、等々を自分自身の言葉で話をさせる。その後私以外にグループ企業で社長が2人いるので、その2人に話をさせる。休憩を挟んで私 が1時間半ほど話をする。最初の30分は、社員が話したことを題材に話をする。実はこれが『ミソ』なのである。例えば『森田』という社員がいて話をしたと する。
『森田、奥さん元気か?』等と話しかけ、彼とのプライベートな部分にずかずかと入り込んでいく。《彼は半年前に結婚をしたのだが、私が仲人をした。その時 彼のお母さんに『今まで社長さんにこの子が成績が良かった時に戴いていたコメントを私が全部持っていますが、この結婚を期に奥さんに渡します』とおっしゃ られた》などと言うエピソードを会社説明会に話すのである。狙いはいかに私と社員との距離が近いかをアピールするためであり、風通しがいいかを示すためで ある。
私は会社説明会に来る学生は全部当社に入社希望か、もしくは大いに関心があるものばかりだと思っていたが、実はそれほどの気持ちはなく、単に少し興味があ る程度で、参加した結果関心度が高くなるかそうでないかに分かれるのだそうである。説明会の終了時にアンケートを採ることにしているのだが、感想欄の中で の私の話についてのコメントを読み、今日の出来を自分で判断するのも楽しみの一つである。この時点で95%の学生は好印象を持ち面接希望がある。結果は前 述のような数字、第一次面接160人、一次面接合格50人、最終面接合格25人、がしかし実質入社するのがグループ挙げて20人くらいになるのである。
当社には《内定》というシステムはない。なぜか?企業も学生もフィフティフィフティだと私は考えているからである。学生も入社間近になって内定を取り消さ れたら困るだろうし、一方企業側だって当てにしている人材が不確定では困るのである。だから内定ではなく採用なのだ。採用だから来ると決まれば来てもらわ なければ困るのであるが、何人かは様々な理由を挙げ断ってくる。人事からその報告を聞くと私はその学生に電話をする。《君が断るのは君の自由だが、君のそ の履き違えた自由のお陰で当社に来たかった学生が不採用になり、或る意味その学生の人生を変えることになるのですよ。今からの人生で君はいろんな人と出会 うであろうし、様々な経験を重ねるでしょうが、どうか自分一人で生きてるなんて思わないで、少しは周りに感謝をする気持ちを持って生きて下さい》というよ うな意味のことを伝える。学生にとっては《煩いおっさん》ときっと思っているだろうが、私は言わざるを得ないのである。何年か後に彼が、そう言えばあの変 なおっさんが言っていたなあ、と思い出して欲しいのである。
それでも20年前からすると随分採用はしやすくなったものである。サンホーム兵庫に関しては90%くらいは納得のいく採用ができるようになった。お客様の 子供さんも当社の社員にいるし、お客様の推薦でこの会社を応募したと言う学生も時々来るようになった。問題はその他のネットワーク企業であるが、企業とし て真の力をつけ、好感度を揚げ、魅力のある会社として地域に認められるようになるしか解決方法はないのである。人の採用も大変重要な事柄であり、5年以内 に解決しなければならない課題である。
私の悩みは様々な形で続いていく・・・。

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